夏色寓話




僕は世界の広さに悩み

君は夏の陽射しに笑った
アスファルトの熱と 急な坂道
駆けていったのは 子供の頃の僕たちで


坂の上では君が待っている
麦わら帽子はいつだって風に飛ばされて
入道雲を遮って消えていった
日陰を選んで歩こうとしたけれど
それもうまくはいかない
君は笑っていた


時計塔の鐘が鳴った
僕は振り返って

もう一度、緑とレンガの街に別れを告げる
どこへも行けるはずはないのに
子供の頃の僕たちは
いつでもアスファルトの熱と 急な坂道を


坂から広がる景色が好きだった
ひまわりはいつだって僕より背が高い
不意に降り始めた雨に
はしゃいだのは僕で
思い出したのは君で


「これは何度目の夏なの?」


夏の終わりには このひまわりも枯れる
次の夏にはきっと僕の背も伸びて
君はそれを知らないままだけれど
相変わらず麦わら帽子を飛ばしては
坂の上から 次の街をみている