満月の沈む海




   珊瑚が八潮に子をのせた
   海は淫らにそっと濡れ
   脆く抱かれて
   ゆらゆら浮かぶ
   金木犀


   海蛇かくれてそのまま朽ちた
   こぽこぽ酸素を空へと返し


   紅い魚は夜に向かって
   ゆっくり小さなその眼を閉じた
   蒼い魚は海のその端
   生き返るため泳ぎだす


   ささら ささら、と
   波の閉じる 音の静けさ

   
   紅い
   眠りと
   蒼い、蒼い
   海。