あずきあらいは
  しゃなりしゃなりとあずきをあらっていた
  まだ暑い長月の
  山深い涼やかな川のほとりで

  鹿の透き通った声が山に響いていた
  良く晴れた日の
  お天道様のたかい時分だった

  川に沿って風が吹いていった
  ほんのわずかにかおる
  紅葉の木肌の匂いをのせていた

  あずきあらいは
  細く長い、枝に似た指で
  丁寧に
  しゃなりしゃなりと
  あずきをあらっていた

  あずきはお天道様の下で
  美しく澄んだ色をしていたのであった  

あずきあらい