砂礫への憧憬





   神は羊肉の詰まった皮袋だと云った
   死者の書を離さない女のために
   未だ王は石を積む

   棺から這い出たのは蛇。
   腐るほどに在った木乃伊を喰い尽くし
   砂の其の底 隠れて眠る

   遊牧民の肋骨を集め
   太陽の船を川に浮かべる
   古王国から逃げ出したのは
   化粧版の後継者だった

   三十二番目の王朝が
   東で鷹を狩る。
   ヒエログリフで記された
   それは最期の、最期の信仰。