菖蒲(アヤメ)



    庭の菖蒲を
    散らせてしまったのは
    女童の姿をした
    鬼だったかしら。


    雨の中で、
    慈しむように
    花を抱く姿は
    紅い唇を
    噛みしめたまま
    かすかに
    震えていました。


    遠雷が
    叫ぶ
    激しい
    雨



    脳を打つように
    聞こえてくる
    嗚咽に
    私は
    傘さえ差し出すことはできず。


    竹林が、畳が
    薫る。
    たとえば
    夏の日の様に。