信仰の谷




     水時計を壊して沈めた後は
     風を確かめながら
     からくり仕掛けの聖堂を歩きました

     貴方の名前を教えてくれたのは蠍で
     けれど私は一度も呼ぶことなど叶わず
     隣の獅子と約束を交わしたのです

     そして待っていました
     この細紐の先に囚われた
     小さなカナリアが笑うのを
     
     瞳が石造りであったなら
     躊躇いもせず祈ることもできたのです
     階段を降りながら
     振り子の音だけが大きくなってゆきました

     本当に求めていたのは花のひとひら
     それはけして咲くことのない
     私の、侵されない自由でした