海の底の、それは泉





   言葉にされなかった思いはもどかしく
   明確に涙さえ流せないまま
   過去の記憶を探り続けたはずだった
   自分から求めることはしなかったけれど

   狂おしい程の想いはあったのだろうか
   救いになるほどの驚きもなく
   いずれ花は咲いてしまうのかもしれない

   忘れることさえできないのなら
   せめて匂いたつことなどなければ良かった
   愛でることも、摘むことさえもうできはしない


   小さく振った手の
   場違いな程の寂しさに
   微笑むこと以外
   一体何が出来たというのだろう


   暫くして
   孤独の所在を知ったのが
   あの時だったことに気付いた



   もし
   少しだけ
   時間があったなら
   言葉は
   消えないでいられたのだろうか