果物ナイフで髪を切った
      薬とカラスが冬の朝を透明にしていた
      12階の窓からは白い月が見えた
      朝の風は冷たかった
      物語は結晶化した

      私には羽根の残滓さえなかった
      部屋にはカラスの羽根が散っていた
      白いブーケを窓から放った
      彼女の髪はとても綺麗だった
      ままごとの様な結婚式は仕合わせだった
      一晩中ふたりではしゃいでいた

      天井には空色の葉書を貼っていた
      初めてのくちづけは苦かった
      私はきっと挙動不審だった
      彼女は微笑んでいた
      私たちはお姫様になれなかった

      ゆびきりをした




果物ナイフと冬の朝