ポケットで握りしめた手
    そのなかに
    潜んでいた寂しさを隠すように
    僕らは走り出した
    夜明け前の街は
    大きくあげた声を吸い込んでいった


    顔半分まいたマフラーの下で
    思わず吐いて出た言葉の本当の意味を
    気付かれないように僕は
    目を伏せた
    そっと、自然さを装いながら


    夜の灯りに隠れて
    缶コーヒーを放る
    放物線上の
    小さく欠けた月


    悪態の裏には
    少しだけの懐かしさと
    夜明けの足音


    いつか思い出すのかも知れない
    勿忘草の頃、それぞれの街で
    大人になった僕らは


勿忘草のまち