子供の遊びの様に
  ためらいのない動作で
  生きるひともいるのだ
  醜悪さを育みながら
  いつまでもときを数えている

  いまの鬼は誰なのか
  「鬼は赤い靴を履いているよ」
  森を出て
  コンクリートのビルをのぼる
  不安定な脳髄を押さえつける様に
  青茜の空はその色を濃くしていった

  街に絡まった蔦の間を
  するりするりと落とし子達は走る
  逃げているのか
  追っているのか
  口の端を上げながら
  それでもこの街からは出られないだろう
  空を飛ぶために必要なものは
  とうに失くしてしまった

  泣きながら鬼は走る
  笑いながら子供達は逃げる

  細めた目の先
  フェンス越しに掠れる街
  日が沈み月が沈む
  八咫烏ばかりが夢を見る

  泣きながら鬼は逃げる
  笑いながら子供達は走る

  八咫烏ばかりが夢を見る



傍観者、空、落とし子