朝霞





     明日、この街が荒れることを
     私は知っています
     夜汽車に母を乗せて
     ローレライへとかえすのです


     霧がとても深く
     逃げ出すには
     なによりの夜です


     けれども
     私の髪は
     闇の中でさえ目立つので
     母と共には
     行けません


     私の髪は
     なにしろ
     とても紅いのです
     血の通った紅ではありません
     果実の紅とも
     娘達の唇を染める紅とも
     兎の瞳の紅にさえ似てはおらず
     醜い色をしています


     それを知らず
     不思議そうな顔をしている母に
     鞄を持たせ
     曖昧に送り出した後
     穴を掘って
     明日に備えます


     大きな街ではありませんが
     いくらあったとしても
     きっと
     足りないでしょう


     束ねた髪の下
     汗がうなじを撫でました
     石ばかりが出てくるので
     今では素手で掘っています


     守る術のない
     幼い者達のための
     木樽よりも少し小さい
     穴は
     特に沢山必要でしょう


     そのそれぞれに
     花を一輪入れておきます


     そして
     愚かな墓守の名を刻んで
     朝まで、祈るのです