鏡姫




     私は御医者様にかからなくてはいけなくて
     御父様がそう教えて下さって
     私は自分の何処が痛いのかわからなかったので
     御医者様の前で何も言えなくて
     御父様は怒ってしまって

     御医者様はプラシーボを出して下さいました

     御母様はもう随分と長く寝てらして
     お手伝いの葉子さんは私の髪を結ってくれるの
     葉子さんから借りた本はどれもこれも面白くって
     真逆思ってもいない日常に溢れていたのですもの
     御父様の子供はふたりいて
     ひとりは私なんです
     御父様のもうひとりの子供は葉子さんと同じ名前をしていて
     葉子さんはいつも御母様の事を教えてくれるの
     私の御姉様でした

     庭の柳が邪魔をして私はいつでも外のことを知らないのだけれど
     合わせ鏡の御伽草子に心を奪われたままなの
     いずれ私も御母様の様に、御姉様のようになってしまうのだと
     御姉様は言います
     あぁそうね、
     それはでも、なんて嬉しいことだから