冬の始め
     彼女の
     ひどく冷えた髪に
     触れようとして
     不意に

     彼女のただひとりは
     私ではなかったのだ
     と
     知る

     ずっと側に
     いたいと願った
     けれど

     私たちの小さな
     小さな世界は
     破綻した

     「どうかまだ
      起きないで。」

     私は此処にいられないけれど
     せめて
     知らないままでいて欲しい

     小さな指向性が
     支配するだろう
     無邪気に笑っていたひとを

     もしかしたら
     彼女も
     泣くかも知れない
     そう願っていたのかもしれない

     酸素が欲しかった
     必要なのは
     それでは無かったとしても

     何一つ
     たとえば
     すぐに消えてしまうような
     私の記憶でさえ
     残してはいけないけれど

     何よりも愛おしかった
     約束を破ったのは
     冬の始め
     ひどく寒い朝だった



少女たちの朝