アリストテレスの鉱物書A



ここでは「アリストテレスの鉱物書」に記されている石と、
その説明や効能について、いくつか抜粋したものをご紹介します


ドゥッル(真珠)
オケアノスをアストゥール(二枚貝)が受け入れた時に誕生する
※オケアノス=ギリシャ神話における時の神ウラノスと大地の女神ガイアの息子
あまねく水中の生物を生ませる力の象徴 大海を表す英語Oceanの語源

アキーク(紅玉髄)
赤い血のイメージ
出血を止め、月経が長引く時はとりわけよく効く
粉末にしたものは歯磨きとなり、虫歯を取り除き歯茎の血を止める

ジャズゥ(縞瑪瑙)
縞瑪瑙を印章石として用いる人は多くの心配事を抱え込み、悪夢を見るようになる
この石を身につけた子は唾液の分泌過多を起こす
容器として利用した人は眠気がなくなる
この石は非常に硬く、その本性は「冷」と「乾」である
この石を粉末にして鋼石を磨くと、鋼石は美しくなりその輝きは際立つ

バーズフル(ベアゾール=解毒石)
熱の本性が非常に強いので、毒を飲んだ人にこの粉末を飲ませると、
発汗作用によって体の血管から毒を追い出す
どんな種類の毒にも同様に効く

ラーズワルト(ラピスラズリ)
金と結合すると双方とも美しさが増大する

バルクゥィユ(稲妻石)
この石が近くにある女性とは、性欲がつのるあまり、あてもなく迷い歩く
(アレクサンドロス大王は女性が辱めを受けるといけないので、
この石を自分の軍隊のところに持ってこさせないようにした
また、一つを砕いて服用すると彼の体内にサソリが見つかった)

ミヤーフ(水石)
この石は水を吸い上げ水を新鮮にする どこもすっかり穴だらけで軽い
粉末にして毛髪に擦り込むと毛髪は美しく成長する
(その名前は水をろ過することを指す)

マルジャーン(珊瑚)
枝が成長するように大きくなる 目の痛みに効く
最良のものは強烈な赤で、人間の虫歯を抜き歯茎を強化する
心臓に達すると濃い血液の流れを潤滑にして、心臓の負担を軽くする

産卵を楽にする石
内部に自ら動く別の石がある石 その石の動く音が聞こえる
インド人はこの石を知って、お産に利用している

魚を集める石
魚のいるところに置くとその周囲に魚を集める
魚はこの石によって馴らされ(引き寄せられ)この石を好む

眠りをもたらす石
赤い石で、この石を人間が身につけるとその人は深い眠りに陥る
石が取り除かれてはじめて眠りから覚める
(「産卵を楽にする石」「魚を集める石」「眠りをもたらす石」は、
ボロスとフュシオロゴスの伝説に属する魔術の石
ボロスはメンデスのボロスで神秘的錬金術師 フュシオロゴスは神秘的動物誌家)

アルマース(金剛石)
鉛(ウスルブ・ラサース)以外にはこの石に優る力を持つものはいない
金剛石のある谷へは、アレクサンドロス大王以外に誰も到達したことがない
(「アレクサンドロス大王伝」と結びついて語られた
アレクサンドロス大王の東方遠征は数多くの伝説を生み出した
その伝説の中で大王は魔術師、または錬金術師として描かれている)