アリストテレスの鉱物書@



古代の鉱物は装飾品として使われただけではありませんでした
薬剤や呪い、護符として、また特定のものを指すシンボルとしての意味合いが大きく、
それを用いて病魔と戦い、効能についての著書を残した学者も多かったのです
そんな中に、アレクサンドロス大王の教育係を務めたという大賢者、
偉人として名高いアリストテレスがいました

彼の父親が医師であったことが影響したのか、
彼自身も医学、とりわけ自然が持つ生命力や治癒力に注目していきました
その一部を垣間見ることができるのが、彼の著書「鉱物書」です
現存する書は彼自身が始めから書き起こした原本ではなく、
シリア人が作ったアラビア語の宝石書に加筆した写本であると言われています
唯一現存する「アリストテレスの鉱物書」の中では、
彼が著したとされる700種の鉱物の中から選ばれた72種についての
効能などを説明しています

72種の鉱物は以下の通りです(書かれているままの名称です)

真珠 エメラルド 鋼玉 柘榴石 紅玉髄 縞瑪瑙 孔雀石 解毒石
金剛石 スミルゲル トルコ石 ラピスラズリ ザブフ アンバリッュ
マグネット 金を引きつけるマグネット 銀を引きつけるマグネット
真鍮・鋼を引きつけるマグネット 鉛を引きつけるマグネット
肉を引きつけるマグネット 毛髪を引きつけるマグネット
爪を引きつけるマグネット カラク マルカシーサー マグニースィヤー
キブリート(硫黄) ジルニーフ(石黄) バルクゥィユ(稲妻石)
ミヤーフ(水石) マーナグタス 産卵を楽にする石 魚を集める石
眠りをもたらす石 眠気をとる石 驚くべき石1 驚くべき石2
奇妙な石 クィーリッユ 動物の石 湿性の石 潰瘍に効く石
ビッラウル(水晶) スジャーズ(ガラス) ミルフ(岩塩)
ヌーシャーディル ブラーク ナトルーン(ソーダ)
ザージュ(硫酸塩) シャップ タルク(雲母) イトミド(方鉛鉱)
トゥーティヤー マルジャーン(珊瑚) ファイシュール(軽石)
海の動物の石 シャルシートと呼ばれる石 
ダハバ(金)フィッザト(銀) スハース(銅) ラサース(錫)
ジーバク(水銀) ハディード(鉄) カィンカール
緑の砥石 卵に似た石 筋のある石 ハーシルと呼ばれる石
ウスルンジュ(鉛丹) ズンジュフル イスフィーダージュ(鉛白)
ジンジャール石(緑青) 鉄錆

この72種を選んだことについて、
編纂者のセラピオンは序文でこう書いています
「本書の解説者であるアリストテレスは本書で700種の鉱物を扱い、
様々な石や、その物質、色彩、種類、産地について書き記している。
しかし、人間の目に触れないものは人間が知っていることよりも多い。
したがって700種の石についてどんなに詳細に説明したとしても、
世の多くの誰一人として、このすべてに精通することはできないことに気づいた。
だから、一般的に役立つものだけを抜き出し、説明することにした。」