形成と構造A(晶癖について)



ほとんどの鉱物結晶は規則的ではなく不規則な形状を成します
それは結晶面のうちのいくつかが、
他のものよりも大きく発達して目立つからです
それでも、それぞれの隣り合う面の間の角度は常に一定になっています
正八面体や立方体のように
何通りも結晶の外形を持って産出される鉱物は沢山あります
中でも80通りもの結晶形が知られているカルサイト(方解石)が顕著な例です

鉱物がよく好む結晶面の組み合わせを「晶癖」といいます
パイライト(黄鉄鉱)に五角十二面体の形が、
ガーネットに斜方十二面体の形が観察されるといった例があります
晶癖は、平板状、針状、葉片状、円柱や多角柱状といった
その鉱物の産状のタイプも表現しています
晶癖や結晶形といった専門用語を、
一般的にわかりやすく外形構造ともいいます

鉱物は、本来もっていない異常な外形の結晶で産出されることがあります
それは「仮晶」と呼ばれ、次の二通りの起源をもちます
一つはある鉱物が溶け去った後の空隙を、
別の鉱物が引き継いで結晶を成長させる場合
もう一つは、ある鉱物が別の鉱物の外表を覆ってしまう場合です

一定の規則に従って、二つ以上の結晶が互いに成長したものを、
「双晶」「三連晶」「四連晶」などといいます
それぞれの結晶が、
互いに向き合って成長したのか、一方の内部から成長したのかで、
それぞれを「接触双晶」「貫入双晶」と区別します

一定の規則で接合する双晶のほかに、
互いに不規則に成長した集合体もあります
成長の過程によってそれぞれ、
糸状、繊維状、貝片状、燐片状、粒状の群晶が形成されます
岩石の空隙の内部壁に、
よく発達した特徴を持つ鉱物が「晶洞」(ジオード)を形成することもあります
晶洞はマグマの気泡による主に曲面で囲まれた空洞です
アメシストはよくこの形状を形成することで知られています

見たところ外形構造を認められない鉱物を「塊状」といいます
きちんとした結晶格子をもっていますが、
成長過程での何らかによる制約のために不規則に成長したことで形成されます