聖女ヒルデガルトとフシュカ@



900年も前に、「色」「石」「音」などの自然の力によって、
精神を治癒するということを説いた女性がいました
後に「聖女」と呼ばれるようになるドイツの修道女、ヒルデガルトです

聖女ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098〜1179)は、
信仰深い両親の10人目の末娘として生まれます
3歳の頃から神の啓示を聞くようになり、
未来を予知したことから、若干8歳で修道院に入ることになります
何度となく神の啓示を感じていた彼女ですが、若い頃は人に伝えることはなく、40歳の時に「ヴィジョンを公開せよ」という神の声を聞いて口述を始めたとされています

彼女は聖職者として特別な神学や語学を習得していたわけではありませんでした
普通の修道女でしたから、神の啓示を著すといっても自動的に書き留めるだけで、
それを別の修道士がラテン語にして書き写すという方法でまとめたといわれます
10年間にわたる啓示を「スキ・ウィス(道を知れ)」に著すと、
休む間もなく取りかかったのが「フシュカ(自然学)」の編纂でした

「フシュカ」は1151〜58年の間に
「さまざまな自然の被造物の精緻さ」という表題で書かれたものです
植物、元素、またドイツの河川、樹木、石、魚類、動物、爬虫類、金属などにふれ、
石については「宝石治療法」というかたちで著されています

フシュカを編纂していた頃は無名の修道女でしたが、
彼女が受けた神の啓示がグレゴリオ聖歌となったり、
この啓示をまとめた本やフシュカそのものが世に広まるにつれて、
彼女の名前も色を帯びて甦っていったのでした