オルフェウスのリティカ@



古代ローマで「博物誌」が著された約300年後に、
古代ギリシャでも石の詩(古代、文章は誌の形態をとっていました)が著されました
著者はギリシャ人のオノマクリトスと言われていますが定かではありません
この詩集「リティカ(石の本)」は、
後の十二世紀に東ローマ帝国(ビザンチン帝国)の学者ツェツェスによって
「オルフェウスの詩」と名付けられ、
中世以後は「オルフェウスの石について」が一般的な呼び名になったと言われています
(ギリシャ神話に登場する太陽神アポロンと叙事詩の女神カリオペの間に生まれた
オルフェウスに由来)

ギリシャ神話の原型は、前八世紀にギリシャの詩人ホメロスの叙事詩
「イリアス」「オデュセイア」からであるとされていますが、
「リティカ」は、このホメロスの叙事詩の形式をとりながら、
全32種の宝石を774行の詩にまとめています
内容もホメロスの詩でおなじみのオリュンポスの神々、英雄たちを登場させながら、
ホメロスにはなかった宝石物語を展開
叙事詩にして古代ギリシャの代表的な宝石讃歌と言わしめています

ちなみに、簡単に詩のあらすじをご紹介しましょう
「私(オルフェウス)のところへ、
災いを遠ざけてくれる主神ゼウスの賜物を人間たちに授けるようにと、
ゼウスの使いヘルメスが来たので、
私は賢い人間たちがそれを受け取るように語りかける」と、この話が始まります
話の内容は、過去にその才能と知識をもって神に等しいといわれるようになった
偉大な英雄たちの徳を讃え、
ヘルメスが人間に与えたゼウスからの賜物を賛美し、
賢い人間たちにそれを喜んで受け取ることを促します
また、それをないがしろにする人間を非難しています

そうして自分がヘリオス神に捧げるために生贄の子羊を連れて道を急いでいた時の話に移ります
途中でとても真摯なテイオダマス(トロイア王の息子)に出会い、
一緒に行こうと誘った時の話です
オルフェウスは、なぜ自分がヘリオス神のところへ行くのかをテイオダマスに話し、
その話(子供の頃、蛇に襲われ助けてもらったというもの)を聞いたテイオダマスは
同行することを承知します
神殿の丘に向かう道すがら、今度はテイオダマスがオルフェウスに石の力を話して聞かせます
話し終えると、最後にテイオダマスが言います
「かつて私は人に偽りの話は決してしてはならないと誓いました
今、私が話したことは全部真実なのだから、
(正義の神)アポロンよ、この物語(宝石讃歌)をよしとしてください」と