第1章 物質を構成するもの

 


物質は何からできているのでしょうか?

古代ギリシアのデモクリトスは、全ての物質は何もない空虚な空間とそれ以上分割できない粒子”アトム”からできていると考えました。またドルトン(イギリス、1766〜1844)は、全ての物質はそれ以上分割できない粒子からできているという「原子説」を提唱しました(1803年)。

しかし、19世紀末〜20世紀にかけて、負の電荷をもった電子、正の電荷をもった陽子、電荷をもたない中性子などの微粒子が次々に発見され、原子がさらに小さな粒子から成ることが明らかになりました。

原子(atom)は全体として電気的に中性ですが、その中には正の電荷をもった原子核(nucleus)と、負の電荷をもった電子(electron)が存在していて、互いにクーロン力により束縛されています。原子核は、原子の質量の大部分を受けもっていて、極めて小さい領域に集中して存在しています。電子は、そのまわりの空間に確率的に分布しています。

原子核は正の電荷をもった陽子(proton)と電荷をもたない中性子(neutron)からなっていて核力によって互いに束縛されています。1935年に湯川秀樹(1907〜1981)は、核子(陽子、中性子の総称)がπ中間子を交換することによってお互いに力を及ぼしあうという「中間子論」を提唱しました。

陽子、中性子は、さらに小さいクォーク(quark)と呼ばれる粒子からなっています。陽子は2個のアップクォーク(u)と1個のダウンクォーク(d)からなり、中性子は1個のアップクォーク(u)と2個のダウンクォーク(d)からなっています。クォーク同士は、グルーオンと呼ばれる粒子を交換することによって結び付けられています。この相互作用は強い相互作用と呼ばれていて、核子同士を結びつける核力も実はその一形態なのです。ただし、クォークは単独で取り出すことができません。

原子 ―┬― 原子核 ―┬― 陽子 ――― クォーク(uud)
    |     └― 中性子 ――― クォーク(udd)
    └― 電子        

現在の素粒子物理学で「標準理論」と呼ばれる理論体系においては、物質の究極の構成要素はクォークとレプトン(lepton、電子の仲間)であると考えられています。


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