第5回 水滴の生成

 


 大気中に含まれている水蒸気量が、その温度における飽和水蒸気量を超えると、過飽和分は凝結して液体の水に変わる。

2相の共存線は、Clausius-Clapeyronの式

で与えられる。ここでq=T(s−s)は、1mol当たりの潜熱である。
 今、相1を水蒸気、相2を水とする。v≫vであるからv2を無視し、理想気体の状態方程式pv=RTを用いると、

両辺を積分して、

q=43.99kJ/mol,R=8.31J/mol/K,p=611Pa,T=273.16Kを用いると、t℃における飽和水蒸気圧eは、

これは、平らな水面に対する飽和蒸気圧である。

図1:水の飽和水蒸気圧曲線

 しかし、大気中で水蒸気が凝結するときは、まず微小な水滴を作る。微小な水滴と平衡する水蒸気圧は、曲率効果により平らな水面と平衡するそれよりも大きくなる。
Kelvinの式によると、半径rの微小水滴に対する飽和水蒸気圧は、

ここで、σは表面張力、ρは液相の水の密度、Rvは水蒸気の気体定数である。
σ=7.56×10−2N/m,ρ=1.00×103kg/mをRv=461J/kg/Kを用いると、0℃における過飽和度は、

図2:水滴の大きさと過飽和度の関係

 したがって、半径1μmの水滴は過飽和度が0.1%あれば成長しうるが、半径0.01μmの水滴では過飽和度が12%に達しないと成長できない。自然界では過飽和度が1%を超えることはまれであるので、このような水滴は成長できずにすぐに蒸発してしまう。

 一方、大気中に微粒子が存在する場合、水蒸気が大気中で凝結を起こす際、これらの微粒子を核として水滴を生成する。このとき、核となる微粒子の半径が大きければ、過飽和度が小さくても十分成長しうる。また、水滴に塩類や酸類が溶け込むことによる蒸気圧降下も起こり、純水のときと比べると成長しやすくなる。


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