桜・さまざま




桜花散りぬる風のなごりには  水なき空に波ぞ立ちける  
                               
 『新古今集』より/紀 貫之          
   (風に舞う桜花が あたかも大空に波が立っているように見える。)

世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
                               
『古今集』より/在原業平
 (毎年毎年、桜の季節になるとソワソワして落ち着かない、あの桜の見頃はいつなのだろうかと。)

散ればこそいとど桜はめでたけれ うき世になにか久しかるべき

在原業平
  (散るからこそ桜は美しいのである。この世に永遠であるものなんてありはしない。)

願わくは花のしたにて春死なん そのきさらぎの望月の頃

西 行  
  (できれば、私もそうありたいと願っています。)

花は盛りに月はくまなきをのみ見るものかは

 「徒然草」より/吉田兼好
  (とても日本人的な感覚である。というより、ず〜と何百年もの間、日本人の心に脈々と受け継がれてきた美意識なのでしょう。)

風さそふ花よりもなお我はまた 春の名残をいかにとやせむ

辞世の句/浅野内匠頭  
  (殿中「松の廊下」で刃傷に及び、切腹させられた赤穂藩主の辞世の句です。)