検屍官ケイ・スカーペッタ 第11作「審問」上・下
H13.1.13
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パトリシア・コーンウェルの検屍官ケイ・スカーペッタ シリーズが日本で出版されて約9年。
おおよそ1年に1作のペースで続いてきたこのシリーズも今回で11作目です。
毎年、年末近くなって日本版が出版されるのを楽しみにしながら9年も経ったかと思うと
主人公ケイと一緒に9年を過ごしてきたような錯覚に陥ります。

私が抱くケイのイメージはいつも本の帯に載っているコーンウェルそのもの。
イタリア系のアメリカ人でイタリア料理が得意だというところにも憧れるのですが
やはり、医学の世界での男顔負けの仕事ぶりに、
日本ではまだまだ少ない本物のキャリア・ウーマンを見る思いで、
どうしたら、そんなに的確に格好良く、秘書や部下を使いこなせるの?
・・・って思ってしまいます。

私なんて職制上は一応「長」がつくものの、すぐ迎合しちゃうタイプだし、
自分でやったほうが早いや!・・・って全部仕事を抱え込んでしまう。。。。
いつになったらケイのようにテキパキと仕事をこなせるキャリア・ウーマンになれるんだろう
・・・・・と、思いっきりまた脱線・・・・・ええ〜いっ 脱線ついでに・・・・・
Xファイルのスカリー捜査官もスーツをバッチリ着こなすお医者さんで格好いいっす!

元に戻しますね。
ええっと〜、このシリーズにはケイ以外にも愛すべき登場人物が二人います。
太鼓腹で言動は粗野だけれど心からケイを尊敬し慕っている刑事ピート・マリーノ。
確かケイの命を助けたこともあるはずですよ。腐れ縁のような関係?
もう一人はケイの姉の娘ルーシー・ファリネリ。
最初に登場したときは10代の天才コンピュータ少女でしたが、
美しく成長し、FBI技術アナリストをへて、ATF(アルコール・タバコ・火器局)に勤務。
素晴らしい頭脳と容姿を備えながら同性愛者。(←こういう書き方は偏見でしょうか?)
私が想像するところ確実に叔母さん・コンプレックスを抱えてますね。

これまでのシリーズの題名をあげておきます。

1 検 屍 官
2 証拠死体
3 遺 留 品
4 真 犯 人
5 死体農場
6 私   刑
7 死   因
8 接   触
9 業   火
10 警   告


「審問」は前作「警告」の最後でケイが狼男に襲われて助かるところから始まります。
だから「審問」を読み始めた時に、そうだった、そうだった・・・・(だって1年経つと忘れるのよ)
犯人は捕まっても、裁判で立証されなければ罪にはなりません。
第11作では、最近問題になっている、犯罪の被害者とその家族のプライバシーや
後遺症、精神的ダメージにもスポットがあてられており、
ケイの幼少期からの体験や内面がいやが上にもあきらかにされます。
読んでいて辛いし重苦しい感じが前半はします。
そのせいなのか何となくコーンウェルはこのシリーズを終わらせようとしてるのかな?
なんて思ったり・・・・・これは取り越し苦労でしたが・・・・・

お話が前作「警告」に及ぶのはわかりますが、さらにもうひとつ前の第9作「業火」で
ケイの大切な恋人(と言っても最初は不倫だったのよ!)で
FBIのプロファイラー、ベントン・ウェンズレーの死の謎にまで及びます。
ベントンの死は本当に読者の私にもショッキングでした。そこまでやるか?って。。。。

さらに11作では、今までは真相を暴き、罪を弾劾する立場だったケイが 
こともあろうに容疑者扱いされるという 突拍子もない設定にもなっています。
ここで登場するのが、またまた格好いいキャリア・ウーマンの精神分析医アナ・ゼナーと
弁護士のジェイミー・バーガー(←実際のモデルがいるらしいですよ。)。
特にバーガーは弁護士はこうやって証拠固めをしていくのかと思うほど、
精力的で、緻密で、理路整然としていて無駄がない。
最後の審問の場面もバーガーの独壇場。
今でも「弁護士の父」とよばれるキケロの弁論術はこうであったのではなかろうか
と思われるような胸のすくような演説(?)で、思わず唸ってしまいそうでした。

またまた、問題は解決しないままで つ・づ・く ・・・・というのは物足りないのですが、
次回作の舞台はNYというのはまるわかりです。
こうなると早く次回作が出てこないかと待ち遠しく思う
愛読者の心理をついた手法に はまってしまっている自分に苦笑してしまいます。
長年勤めたリッチモンドの検屍局長を辞したケイが
女性スタッフによる私的捜査機関「ラスト・プリシンクト(最終管区)」で
活躍するだろうことも、次回作に期待できそうです。

なお、ワニブックから下記の解説本が出ています。
「検屍官研究」・・・素顔のコーンウェルと「検屍官」
和田奈津子 編


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