番外編1 猫のシックス・センス(平成12年6月〜8月)

 かあさんは随分と僕の日記をほったらかしにしている。「だって5年も6年も前のことなんかそんなに覚えていないわよぉ。」だってさ。じゃあ、そんな昔から僕の日記を書かなくてもいいじゃないかぁ。いつだってかあさんは自分勝手なんだから〜。お父さんの気持ち、なんだか僕わかるなあ。ということで番外編として最近の僕の日記を書くことにしたんだ。

みんな、映画「シックス・センス」って知ってる? ボクは見たことないけど(当たり前じゃ!)、人間には誰にも第6感というものがあるらしいね。ホラッ、ビビッときたとかいうやつ? んん? 違う? まあいいや、その第6感は子供の方が大人より強いんだってね。よく赤ちゃんが空中に向かってバブバブ話しかけたりしてるじゃない。そういう大人には見えない霊とかも見えるという映画なのかな?ラストも、ええ?じゃあ、あの人は何だったの?らしいね。

 僕にも実はシックス・センスがあるんだよ。6月だったか、ベランダで日光浴をしていたら、いきなり使い古しの蛍光灯(50pくらい)が突然パタンッと僕のほうに倒れてきたんだ。もぉ、僕はビックリしてベランダの手摺に駈け上っちゃいました。僕の小さな心臓はバクバク状態で手摺に張り付いてしまい、降りることができなくなっちゃいました。そんな僕をお父さんはなんとか、手摺からはなして部屋に連れ帰ってくれましたが、僕はその時、かなり抵抗してお父さんに引っ掻き傷を付けてしまいました。ごめんね、父さん!

 それからというもの、僕はとてもセンシティブになってしまい、玄関と玄関横にあるかあさん達の寝室をテリトリーとするだけで、リビングには入いろうとしませんでした。だってリビングの食卓の下に何かいるのを感じるんだもの。食事の時だって姿勢を低くして、抜き足差し足でこっそりと台所へ行きます。「家の中だけにいてはダメよベランダにでなきゃ!」なんて、かあさんのいじわるぅ。ボクはテレビの前のソファにさえも怖くて近づけないんだよ。こんなボクを見てかあさんは「あらまあ、この子ったらシックス・センスだわ!」なんて軽く言ってくれるんです。

 ボクね、思うんだけど、5月の連休あけくらいからかあさんは、インターネットであるドラマ関係の掲示板に夢中になっていて、詩を書いたり、まるで文芸評論のような文章を書いたりしてるんだ。時には書きながら涙を流してることもあるんだよ。それまで文章を書くのが苦手だとか言ってたくせにパソコンに向かってパコパコやり出すと時々ビックリするくらい言葉が湧き出てくることがあるんだって。そんなかあさんの“気”が充満してたんじゃないかな。ボクはその“気”を形として捉えてしまったのかもしれません。

 かあさんはめっきり睡眠時間が短くなってしまいました。ベッドのかあさんの布団で寝てるのはかあさんではなくボクなんだ。父さんと一緒に寝る時間はかあさんよりボクの方がきっと長いと思うよ。時々かあさんはビデオを見ながらソファで寝ちゃってるしね。かあさんがはまってるドラマですか? 「二千年の恋」っていいます。3月に終わったドラマなんだよぉ。主役の金城君にも夢中になっててお宝はどんどん増える一方。かあさんいい加減にしないと父さんが可哀相だよ。

(写真: ワァァァァ、化け猫!! 違う違う、ボクだってば! シャッタースピードを遅くして撮ったらボクが欠伸をしてしまったんだ。でもなんか“シックス・センス状態”に見えませんか?)