第10話 かあさんの実家(平成6年4月30日〜5月3日)

かあさんの実家はかあさんが小学4年生の時に建て直したあと、さらに後ろに建て増しをしました。だから、かあさんのマンションと違って部屋がたくさんあります。畳敷きの部屋も1階、2階のそれぞれに3つあり、1階には仏間とお祖母ちゃんの部屋があります。2階はお客さん用の6畳間と8畳間が続いてあるので、かあさんと父さんはここで寝ることになりました。ボクのトイレもエサ入れも2階の踊り場に用意されました。

さあ、お祖母ちゃんとの対面です。ボクはまだその頃は小さかったので「カワイイねえ!」とお祖母ちゃんは言ってくれました。でもお祖母ちゃんはどちらかというと犬派です。かあさんやかあさんの弟が拾ってきた犬の面倒を実際に見てくれたのはこのお祖母ちゃんなんだって。「ケンちゃん、元気だった?」ボクとの再会を、勿論かあさんの母さんも喜んでくれましたよ。でもねえ、一戸建ちの家なのでみんなはどこか隙間からボクが外へ出て行かないかと戦々恐々としていました。窓という窓の鍵は全部締められてしまいました。東側にある10b近い縁側の窓も全部ですよ。ウウッ、厳しい!

そうそう、車の中で毛についてしまったグリスをとるために、ボクはお風呂に入れられました。でもネコ用シャンプーはなかったので石鹸で洗ってもらいました。シャンプーのあとはドライヤーで乾燥。フーッ、長旅のあとのシャンプーは疲れます。ボクは寝床を探しました・・・どこで寝よっかな? 2階の和室には幅二間(そう言うんだって)の大きい押入があります。ボクにとって襖をあけることなんて朝飯まえ。難なく襖をあけると、おお、気持ちよさそうな布団がいっぱいあるー。この押入をネグラにすることにしました。ホントはもう一つ、2階の物置も暗くて静かだから気に入ったんだけど、どこにいるかわからなくなるからって、かあさんが物置の戸をガムテープで封印してしまったので入れなくなったんです。物置にはお祖母ちゃんが嫁入りの時に持ってきたという大きな長持があったので面白そうだったのになあ。つまんない。

かあさんの実家がある町は日本海に面した半農半漁の町です。漁港もあって朝早く魚市場もひらかれるんだって。かあさんが実家にいた頃は行商のおばさんが毎日リヤカーをひいて新鮮な魚を売りに来てたそうです。もちろん近所の猫もリヤカーについて回ってたらしいよ。うーん、ボクも経験してみたかったなあ。 あっそうか、ボク生魚は苦手だったんだ。よーく焼いてね、かあさん! 白身魚だったら最高! ええっ? 何だって? 猫のくせに生意気だって?

新鮮な白身魚を食べて満足、満足! あとは寝るだけ。でもねえ知らない家だからちょっと不安なんだあ。だからみんなが寝静まっころに家の中を探検してみたの。いやー、田舎の家は部屋が多くて、みゃあったみゃあった(参った参った)。翌朝起きてきたかあさん達はビックリしてました。家中の襖という襖が押し入れにいたるまで全部少しずつ(10pくらい)あいていたんだって。だからボクは叱られました。「コラッ! 襖は開けたら閉めておきなさい!」 あのねえ、かあさん、猫が開けた襖を閉めたらバケ猫だよ!

(写真: ボクのお気に入りの場所その1・・・食器の棚上のカゴの中。カゴだけだと痛そうだから、かあさんがキルティングの布を敷いてくれました。狭すぎる? ううん、丁度イイ感じ!)