< 書 評 >


タイトルの「私が死ぬと茶は廃れる」は、千利休が晩年に残した言葉である。
確かに明治以降、茶は武士=男のものから花嫁修行の道具へと変容した。
果たして利休の言う通り、茶の本道は廃れたのか。
現在、どうすれば本当の茶に出会えるのか。
門外漢だが茶に興味を持つ著者の旅が、ここから始まった。

知り合いの茶会に参加したことをきっかけに、
島根県松江市で男ばかりの茶の研究会を主催する金津滋に巡り会う。
若い頃に陶芸家・河井寛次郎に触れて柳宗悦(やなぎ・むねよし)らの
民芸運動に関わり、染色・書画・文章を能(よ)くし、料理もうまい。
茶道具を求めるために7軒の貸家を売ったという粋人だ。

《茶に明け、茶に暮れるのが、茶です。忙しくて仕事などしている暇はない。
今盛んなのは余暇にやる趣味の茶、茶ではありません》
と語る金津を通して、茶の本質を探索していく。
素人にもわかりやすく茶の世界をひもといた本書は、
今までに類を見ない面白さで一気に読ませる。


茶人 河野弘子


現代茶会に見られるきらびやかな和服の群れと
利休の唱えたわびさびの茶は同じはずがない−。
素朴な疑問を抱いた著者が、
あふれる好奇心に導かれるように茶の世界を訪ね歩き、
出雲の国で会った茶人・金津滋(かなつ・しげる)の
生き方に真の茶道の姿を見る。

「茶の道は素人」を公言してはばからない著者は、
「素人が素人のために書く茶の本があってもいい」と
茶の世界に首を突っ込む。書の中で、自身の取材過程を描きながら、
難解な茶の道を一つひとつ解きほぐし、確信に迫っていく。
まるでよくできたサスペンスドラマを見るように、読者を引き込む。

茶を「行儀作法のマニュアル」程度にしか認識していなかった著者が、
知人との話から知った金津の存在。
七軒持っていた貸家がすべて茶道具に化けた−といわれる金津は、
「『茶』に明け『茶』に暮れるのが『茶』。
忙しくて仕事などしている暇がない。
今盛んなのは『趣味の茶』。『茶』ではない」と語る。


作家 関根成元


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