ASCALON

The DragonSlayer's Blade


<寄贈の間 /頂き物小説 /工房玄関>


―――――0―――――

 魔刃、そう呼ばれ恐れられ、崇められた数本の武器がある。
 魔力の源、マナを使い、人知を超える力を発揮する武具だ。
 魔術師の存在、優劣が戦局を決めるのと同時、「魔刃」の使い手がいるいないで前線の勝敗が決まるというほど、その存在は強大であった。
 ある魔刃は一騎当千の力を持ち主に与え、また別の魔刃は竜巻を呼び、嵐を起こすものもあるという。
 そんな驚異的な力を持つ魔刃の中で、伝説として語られるようになった一振りがあった。
「ドラゴンスレイヤー・アスカロン」
 名前の通り、ドラゴンを殺す事を目的として作られた魔刃である。
 名高き剣匠、ローラン・S・ジョージの手によって作られたそれは金剛石よりも硬いドラゴンの鱗すらまるで真綿の様に貫き、はさみで紙を切るかのごとくその鋼鉄のような肉を切り裂くのだという。
 しかし、その見返りは大きい、力が大きいという事は、それに比例して使用するマナが大きくなるということなのだ。
 その力は類を見ない強力さを持っていたが、それゆえに使い手は魔刃に自らのマナを根こそぎ奪われ、魂を失ってしまうのだ。
 最高にして最低の魔刃、それが世間の付けたアスカロンへの評価であった。
 使えない魔刃、アスカロンは使い手から使い手へ、ことごとく魂を奪い去っていった。
 もはや「ソウルイーター・アスカロン」と名を変えた伝説の魔刃の所在を知るものはいない。
 ………そう、少なくとも僕と、彼女意外は…

―――――1―――――

 ディムトーる。領土拡大に力を出し始めたレノア公国にとってそこは正に新天地、新世界と謳うに相応しい土地であったに違いない。
 そう、その大陸の現状を知るまでは。
 その大陸は魔獣や幻獣といった、亜獣達の楽園だったのだ。
 しかし、それを知ったからといって「触らぬが仏」と引き下がるほど、人間の欲というのはあっさりしていない。
 レノア公国はディムトール大陸に騎士団や魔術師団、傭兵師団を送りこみ、開拓を促したのだ。
 一部では無用な刺激を亜獣に与えないほうが良いというもっともな意見もあったが、それらはほんの少数の意見でしかなかった。
 レノア公国の領土は死んでいたのだ。
 不良土、少ない水源、降らない雨、乾いた風、全てが人に死をもたらそうとするものであった。
 いつかこの開拓……いや"侵略"を行わなければ、レノアは滅ぶ。それが公王の言葉だった。
 とはいえ、下っ端の、それも傭兵である僕にそんな大義があるわけが無く、目的はただ純粋にお金を稼ぐためだったのである。
「それが、なんで魔竜討伐何て事になるんだよ」
「わがまま言わない!さっさといこーよ、アスタァー!!」
 木漏れ日の温かい原生林の中、元気にはしゃぐ相棒に腕を引っ張られてアスターは無理矢理歩かされる。
 長い耳に緑の瞳、リョースアールヴと呼ばれるハイエルフ種の少女リオ、それが彼の相棒である。
 やや小さめの戦闘法衣と、ハーフパンツ、なんともミスマッチとも思えるその身なりの中で最も間違いだと思えるやたら装飾の多いフォセ・クラスの大剣、それが魔術を得意とするリョースアールヴの彼女の得物であった。
「こんな大仕事久しぶりじゃない、それに、これで1年はパーッと遊んで暮らせる額の報酬が待ってるのよ♪」
 ………確かに魔竜討伐は、高額の仕事ではあるし、魔獣退治は自分と彼女の専門分野ではある。
 しかし………
「何で僕らだけでこんな大事を任されるのか気にならないか、リオ?」
「んー……いいじゃん、報酬は二人で山分けできるんだし♪」
 リオは気にする素振りも無くただただ今回の仕事の報酬と危険度の高さにはしゃいでいるだけである。
 もともと魔術師である僕の詮索のしすぎなのか、それとも彼女の、リョースアールヴ独特の陽気さから来る楽観視のどちらなのかはさておきだが。
「とりあえず、ウォルド騎士長の計らいである事に間違いは無いと思うんだよ」
「ふーん、あの変態親父もいい事してくれるじゃない♪」
 それだ、アスターはリオの陽気な一言にガックリと項垂れた。
「どしたの?」
 彼の落ちこむ様をさも楽しげにリオは覗きこむ、長い耳がピンと天に向かって立ち上がっているところを見ると、本気でこの状況を楽しんでいるに違いない。
「ほら、君さ、こないだウォルド騎士長の誘いをひとつ返事で断ったろ、多分あの人その事根に持ってこんな仕事を僕らに押し付けたんじゃないかな?」
「なに言ってるの!!アイツってばあたしのお尻をいきなり触ってきたんだよ!?いくらこっちが傭兵だからってあれは絶対セクハラだわ!!」
 だからってその後の誘いを金的で返事したのは不味いだろ、アスターはため息とともにそんな思いを吐き出した。
「あの時は本気で汚されると思ったわ!!」
「僕は君と一緒に殺されると思った………」
 そんな会話を続けながらも、アスターとリオの二人は原生樹の森を抜け、問題のドラゴンのいるといわれる場所についた。

―――――2―――――

「ひどい有り様だな……吐き気も出てこなくなるよ」
 森の浅いところから隠れてアスター達の見たそれは、正しく戦場跡であった。
 恐らくその場所を覆っていた木々は既に灰燼となって消滅した後で、そこには隕石召喚の呪文によって作られたクレーターのような荒野が広がっていた。
 その中心に、ドラゴンと、アスターのいう吐き気も出なくなるようななにかがあった。
「そうかな?ドラゴンって言っても所詮捕食獣でしょ?当然の行為じゃない?」
 目の良いリオには、それがはっきりと見えていた、肉である、それももはやなんの肉か区別のつけ様の無いものだ。
「しっかし凄いや、ゴブリンの肉やらオークの肉やら……あ、あれってこの前どさくさに紛れてあたしの胸触ってきた奴じゃない!?」
 オークやゴブリンの群れを追いまわしていた騎士たちが偶然ばったりあのドラゴンに出くわした、そんなところか、リオの胸くそ悪くなりそうな独り言を聞いて察するに、騎士団とゴブリン、オークの一団はどうやらドラゴンの餌になって大きな肉の山になっているといったところか。
「それにしてもあれくらいでかいとなに級って言うのかな?レッドドラゴン?それともやっぱりバハムート?」
 瞳を輝かせてアスターに訪ねるリオ、それとは正反対に顔色を悪くしているアスターは、もう一度じっくり眺めて呟く。
 ドラゴンだけではないが、亜獣には格付けがある、それというのも傭兵が対峙した時の報酬に対しての格付けをするためなのだ。
 リオの言ったレッドドラゴン級、バハムートドラゴン級のほかにも色々あるが、高額なドラゴンは大体その二つのどちらかだ。
 しかし、今回のは格別であった。
 洗練された重鎧のような鱗、睨まれただけで射殺されそうな深紅の瞳、はばたきで全てを吹き飛ばしてしまうのではないかと思える皮膜の双翼。
「あれは多分ティアマットドラゴン級じゃないかな?」
「え……あれがティアマット!?世界に数頭いるかいないかっている……あの!!?」
 彼の言葉に、リオは瞳を燦然と輝かせ、アスターに問い質す。
「ん……多分あの大きさになるとそうだろうな」
 ちらりとリオの顔を覗きこむ、予想通り宝物を見つけたトレジャーハンターのような極上の幸せ色をした瞳をしている。
(あーあ……)
 業火に油を注いでしまった事にアスターは後悔した。
 どうせ面倒な事になるとは思ってはいたが、まさかバハムート以上のドラゴンを相手にする事になるとは………
「良いかリオ、相手はこれまでにない奴だ、慎重に頼むぞ」
「わかってるよぉ、援護は任せたかんね」
 いつもこういうシフトである、リオが斬りこみで、アスターがその後ろから彼女をサポートする、まぁ彼が魔術師である以上、あまり前に出ることが好ましくないから当然である。
 リオは立ちあがると手のひらを天に伸ばし、風の流れを確かめた。
『風の精霊よ……我を戦場へと誘え…』
「リ…リオ、何をする気だ?…慎重にって言ったろ?」
 アスターには嫌な予感しかしない。
 そんな彼を無視して、リオの周りには精霊が取り巻き始める。
『ジルフェ!!』
「リオ!!精霊魔術なんか使ったら………!!」
 魔術の反応にティアマットドラゴンはこちらの存在に気付いた!!魔竜はその双翼を大きく広げてすぐさま臨戦体勢に入る!!
「グォァァァアアアアァァァァ!!」
 鼓膜の破れそうな雄叫びを発するティアマットを目の前に対し、リオは抜刀の構えで特攻していく。
「………どこが慎重なんだよ………まったく」
 とはいえ、これがいつもの二人の戦い方で十八番だったりする。

―――――3―――――

『炎の精霊よ、我が敵意、我が殺意を糧に我が力となれ!!』
 リオは間近まで風の精霊ジルフェの力で接近して精霊術で攻撃しようと詠唱をした、しかし!!
『ヴルカン!!』
『グォオオオオオオ!!』
 瞬時に気配を悟ったティアマットはリオの放とうとした精霊術に対抗して閃光の魔術を使った!!
 炎と閃光がリオの目の前でぶつかり、小さな太陽となって燃え上がる!!
『我の中に眠るマナよ!!友を殺意より守りし盾となれ!!』
 とっさにアスターはリオの目の前に障壁を張り、彼女を守る、一瞬でも判断が遅れれば彼女の体は見るも無残な大火傷を負うところであった。
「クッ!!」
 障壁から漏れ出る高熱に、リオは思わず後ろに飛び退く、まだ風の精霊の力が残っていたらしく、思ったよりも後ろに飛び退いてしまっていた。
「グオオオオオオ!!」
 突然のリオの攻撃に驚いたのか、ドラゴンは急に空に飛びあがると悲鳴の様に叫ぶ。
「どうにも急にしかけられたもんだから気が動転してるみたいだね」
 猛烈な突風の中とアスターはそんな事を呟きながらリオに近寄る。
 と、突然ドラゴンはこちらを見下ろし、再び閃光を吐き出す!!
 空気を切り裂く音と共に、狂気の光があたりを包む!!
 アスターの得意とする古代語魔術ではもはや間に合わない!!
『……地の精霊よ、我がマナによって生を得ん、我与えし生で盾とならん………』
 死という言葉がアスターの脳裏を過ったその瞬間、目の前に黒く巨大な壁が津波の様に現れた!!
『ノーミディス!!』
 一体、何秒の出来事だったろうか、しかしそれはアスターとリオにとってはまるで数分の出来事の様であった、リオの精霊術によって作り出された土の壁に熱閃は全て吸収された。
「だから言ったろう、慎重にいかないとって」
「だって、まさか精霊術が弾かれるなんて思わなかったんだもん」
 子供のような言い訳をするエルフの少女に、アスターはため息を一つ、まぁ生きていただけよしとしておこう。
「とにかく、どうやったら君の"それ"をあいつにぶつけられるかを考えないとな」
 アスターは言いながらリオが背中に帯びている大剣を指差す。
 必殺の威力と同時に多大なマナの消費を使い手に要求するハイリスクな魔刃、それが彼らの切り札である。
 そんな相談を知ってか知らずか、ティアマットは上空からこちらの事を探しているのか、攻撃をしてこようとはしない、待ち伏せだとしてもありがたい事だ。
「でもさ、今までのパターンが通じなかったけど、どうやって接近するの?」
 問題はそこだ、精霊呪文の中で最高位に属する四大精霊のひとつ「ヴルカン」が通用しなかった事を察すると、ティアマットには到底古代語魔術は通用しないと考えていい。
「ま、使い手が使い手だしね」
「ちょっと、それってどういう意味よ!!」
 精霊は使い手のマナを糧にして成長する、リオの場合、使い手の素早さや跳躍を向上させる事を得意とする「ジルフェ」意外はあまり使うことはない、だから成長しないので弱いままなのである。
「まぁこういうときのために精霊を育てていたほうが良いと思ったけどねぇ」
「こんな時に言わないでよこんな時に!!」
「グオオオオオオオオオッ!!」
 静かだった荒地に再びドラゴンの雄叫びが響く!!同時に巻き起こるはばたきがリオの作った土の障壁を粉砕した!!
「やっこさんしびれを切らしたみたいじゃない?どうするのアスタァー!?」
 ドラゴンの次の攻撃、急降下をかわすためにリオ達は急いでその場を駆け出す。
 ドラゴンは彼らの予想通り、さっきまで彼らが止まっていた場所に地響きと共に墜落してきた。
「仕方ない、不本意だけど僕がアイツを引き付けるから"そいつ"でズバッとやってくれ、いいね!!」
 アスターは彼女の剣を一瞥して告げる。
「待ってよ、それって囮って事!?」
 アスターの言葉に、彼女は困惑して聞き返す。
「冗談止めてよ!!一歩間違えたらアスターは……」
 彼女のその表情は、さっきまで死体の山を見てはしゃいでいた傭兵のものではなく、一人の少女のものであった。
「こんなところで死ぬ気なんかあるかよ………君を信頼するからできるやり方だ、まかせるぞ!!」
 リオはいつになく真剣な顔をして首肯した。

―――――4―――――

「グオオオオオオオオ!!」
 ドラゴンは今まで以上に大きな雄叫びを上げて翼をはためかせ、突風と共に舞いあがる!!
 かなりの興奮状態の様だ、急に刺激を与えられ、更に焦らされもすれば、当然なのだろう。
「しかし、空を飛ぶ事が有利だというのはちょっとお門違いだね」
 騎士に対してであればそれは確かに勝因にもなろう……だが。
『風よ、力をもちて生きる風よ!!嵐となり、全てをなぎ払う粛清となれ!!』
 アスターが大声で詠唱すると、突然ドラゴンのはばたきによって発生した突風を消し去った。
「ここからだ、リオ」
「うん」
 アスターの後ろに立っていたリオは小さく首肯して身構える、既に彼女の大剣は鞘から抜刀され、その洗練された銀の刃をさらけ出している。
『テンペスト!!』
 アスターは突然の事に戸惑った様子を見せるドラゴンに向かって呪文を唱えた!!
 無風状態の空に、突然大嵐のようなもう風が吹き荒れる!!
『ジルフェ!!』
 それを合図にリオは風の精霊を呼び出し、大きく跳躍、嵐の中へ飛びこんだ!!
 ドラゴンはといえば、突然の嵐に動揺して体のコントロールを失っている。
「それが飛ぶって事です」
 ついには双翼でバランスをとる事も忘れ、ドラゴンは無様に墜落した。
 しかし、ドラゴンは背中から落ちるなどという事は無かった。
「グオオオオオオオオオオンッ!!」
 ドラゴンは四肢でなんとか立ちあがると、すぐにアスターに向かって頭突きをしかけてくる!!
『マナよ!!見えざる壁となれ!!』
 アスターはすぐに障壁を紡ぎ出してそれを防ぐ。
『我が敵意、我が殺意、マナにより生を得ん!!マナにより殺意を得ん!!』
 立て続けに攻撃の呪文を詠唱する!!
『グガァァァァ!!』
『ブレイズ・レェイ!!』
 ドラゴンの放つ光熱の吐息と、アスターがマナから生み出した熱閃光波が衝突し、激しくぶつかり合い削りあう!!
「くぅ!!」
 空気が熱によって切り裂かれ、激しい悲鳴を上げる、練達の技を持つ魔術師でも、これ以上の膠着は死を招く。
(さすがにこれ以上は……)
 アスターは自分の力量を悟り、熱波の波に変化を与え、ドラゴンの閃光を曲げた!!
 閃光波大きく方向を変え、天を貫く!!
(しまった!上空にはリオが!!)
 そう、リオは風の精霊によって空を舞い、アスターの作り出した嵐に乗って空高くまで飛んでいたのである。
 自由落下と魔刃の力でティアマットの首を一刀両断するはずだったのだ。
 しかし、あの熱閃の中、彼女が生きているとは、人の形をしているとは思えない。
(否……彼女なら!!………「あの」魔刃なら!!)
 再び、アスターは空を見上げる、そこには、刃を下に向けて構え、落下してくる少女の姿があった!!
「う・オ・オ・オ・オ・オ・オオオオッ!!」
 少女は魔刃を天にかざす、ドラゴンはそれを待ち受けるように大口を開き、閃光を放つ体勢になる!!
『ゴアアアアアッ!!』
 ドラゴンの唸り声と同時に、純白の閃光がリオの目の前に広がった!!
 だが!!
「き・く・かぁぁぁぁっ!!」
 リオは力いっぱい怒鳴り、マナを吸って赤熱化する魔刃を振り下ろす!!
 魔刃の力とドラゴンの熱閃がぶつかり、周囲を光熱の光が包む!!
『マナよ!災厄から我が身を守れ!!』
 アスターはとっさに障壁を張り、地獄の熱に耐える、瞳を殺すほどの光に目をあける事ができず、リオの様子を伺えない。
 しかしアスターは空気の悲鳴に満ちるその中で、確かにドラゴンの断末魔を耳にした………

―――――5―――――

「リオー……リオー…?」
 戦いの終わった灼熱地獄の中、アスターは少女の影を探した。
 そう、正しく地獄であった、熱によって木々は燃える間もなく溶け、最初にここを訪れたときのニ、三倍のクレーターができあがっているのだ。
 ドラゴンはこの熱地獄の中、障壁など張る由もなく、自らが吐いた熱によって丸焼きになっていた。
 鱗は溶け、その隙間から見える肉はまだ異臭を放っている。
(彼女もこの熱源の中心にいたんだよな)
 もはや、生きているとは考えにくい。
 これでは死んで当然………
 ……の、はずだった。
「アスタァー……呼んだ?」
 彼はその声が空から聞こえた様に思えた、だからという訳でもないが、かれはどらごんの亡骸に目をやった。
 そこには、誇らしげに剣を世界でも最大級に格付けされる、ティアマットドラゴンに魔刃を突き刺している少女がいた。

 ――――――――――リオだ。
「いや、無事みたいだな、それならいいよ」
「良くなぁ―い!!何よ!!いきなりこっちにビームなんか飛ばしてきてさ、"こいつ"があったから助かったものを………相棒に何てことするのよまったく!!」
 言う割にぴんぴんしている少女に、アスターは再び安堵を漏らす。
 リオはアスターが弾いた光熱波を魔刃で斬り割き、第二波をドラゴンに向かって魔刃で跳ね返したのだ。
(そうだな、いつもこうじゃないか)
 要らない心配をしたみたいで、少し笑えた。
「ねぇねぇ、これで幾ら貰えるかなぁ?」
 リオは、ドラゴンの亡骸を蹴りながら彼に質問する。
「……そうだね、形状がぐちゃぐちゃになってるし、多分ティアマットとしては扱ってもらえないかもね…」
「え゛――――!!なによそれェ!!目一杯苦労したんだよ!!それなのにィ!?」
 それでもレッドドラゴン、交渉次第ではバハムート級くらいには扱ってくれるんじゃないかなぁとアスターはリオをなだめるが、彼女はそんな彼の言葉など聞く耳がなかった。
「まぁまぁ、それでも結構な額だろ?」
「だめだめだめぇ!ティアマットじゃなきゃやだぁー!!
リオはドラゴンの背中の上で地団太を踏む、その姿を見て「彼女がこのドラゴンを退治しました」などとはとても言えないし思えない。
「………こうなったのも、みぃーんなアスターのせいだからね!!」
「はぁ?」
「そうじゃない!!こんな策で戦おうって言ったアスターのせいなんだからね!!」
 リオは、そう言ってドラゴンから飛び降り、ずかずかとアスターと肉薄なところまで迫る。
「だから……もう囮がどうの何て………やだよ」
 アスターは彼女がはにかみながら呟くのを見て、フッと微笑み、彼女の頭をくしゃくしゃとかいぐり回す。
「わかったよ、さて、それじゃ駐留所に帰ろうか」
「今日の晩ゴハンは報酬減らしのアスターのおごりだよ♪」
「わかったわかった」
 アスターは静かに呟いてリオと共に帰路につく。

 最高にして最低の魔刃、今は最初にして恐らく最後の最高の使い手のもとにいる。
 魔刃はもう流れる事はない、しかしその伝説は人から人へ受け継がれ、流れて行く。
 やがて伝説となる使い手のもとで………



―――――後餓鬼―――――

いや、後書き。
どこが暑中見舞なんでしょうね(自爆
何だかうだうだと長いだけの文章になってしまった気もするし……
本当は絵がメインになるはずなのに、完全に文章で構成されてしまいました(爆
まぁでもショートストーリでしょ?
きっとショートでしょ、ねぇ、でしょでしょ?

………真面目に感想なんかあると嬉しいなとか思ったり。

でも改めて読みなおすと、
…………駄文(T_T)
こんな駄文を突然送りつけられたにも関わらず最後まで読んでくださった心優しき人々に感謝。
そしてこれを暑中見舞だなどとぬかす自分に…………


天誅!!


本当にお付き合い頂いて心よりありがとう御座いました。

                                            2001729なわたろ


<寄贈の間 /頂き物小説 /工房玄関>


MANABOOSTERのなわたろ様から頂いた暑中見舞いの小説です(^^)
しかも挿し絵付きです!!
感激ですなぁ〜♪
なわたろ様、本当にありがとうございました☆