レイシャの追憶 第一話 死神との出会い
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ルーク=ライナスの名を知ったとき、彼は既に死神という名で呼ばれていた。 その名の由来は様々な説があったが、興味があったのは経緯よりも、その名によって広まった彼の能力だった。 霞のようにぶれるという体捌き。二指に闘気を込め、高い殺傷力を持つという気刃。そして、それらを支える身体と技術。それら全てが、レイシャの戦士としての好奇心をそそらせた。 そのため、初めて彼と対面したとき、レイシャはひどく浮かれていたのを覚えている。 とはいっても、レイシャはアサシンギルドの中でも、諜報活動と交渉術に長けたキース=レイモンドの娘である。彼女自身、父から相手の前で平静に装う術は学んでいたし、ジェチナの混乱期の中で、何度もそれを実践してきた。加えて、直前にルークが自分よりも年下だという事実も聞かされており、幾分か精神的に余裕は持たされていた。 「貴方が死神ルークね。直接会うのは、初めてね」 少なくとも声は震えていなかったと思う。それは隣に立っていたヴァイスが、その後の会話の主導権を握らなかったことからも分かった。無理だと感じれば、すぐに彼が会話に参加することになっていたからだ。 余裕をもてたのは、すぐ前にヴァイスやバルク達と馬鹿騒ぎを演じていたこともあったのだろう。バルクたちには知らされていなかったが、あれはレイシャが普段どおりに動けなかった場合に、彼女だけを弧扇亭の監視から外すという計画があったのだ。 結局それはレイシャが予定通りの会話を行えた事と、彼女自身が予想以上に弧扇亭の面々に興味を持ったことによって杞憂に終わった。 彼女が弧扇亭の一員として見られるようになるのは、それよりも少し後で、ルークの失踪を経た後のことだった。 しかし、弧扇亭に集まった人間で成した故神祭の夜のイベント。あの時には既に自分たちは仲間として認められていたのだと思う。 そして、それを切っ掛けに、レイシャとルークの距離は縮まっていくことになる。
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