昭和20年4月15日 日曜日
櫛の歯ひく大戦果 特攻飛燕隊基地の凱歌 【某基地にて沢本特派員発】 01.9.7


 十三目深更から十四日未明にかけての執拗な敵機の来襲に対し一死報国に燃ゆる神鷲たちは、隊長の攻撃命令一下誓ってこの大任を果さんと、こゝ某基地の特攻飛燕隊員は一斉に出撃した。

 二十二時五十分戦闘開始が下ると、まづ「みかづき」隊長
大尉機、中尉機、准尉機、軍曹機は基地を飛立った。
 間もなく
隊長機から埼玉県川口市の南方上空で一機を撃墜、東京湾上で二機撃破の無電が入った。基地では「隊長がやったぞ」と快哉を叫び、つゞいて中尉機が江戸川上空で二機撃墜、准尉機は荒川の上空で二機撃墜破といふ胸のすくやうな戦果が櫛の歯をひくやうに入って来た。更に「そよかぜ」隊長大尉機が千住の上空で一機撃墜、板橋の上空で一機撃破、中尉機は浦和市の上空で一機撃墜といふ快報であった。次いで「とっぷう」隊長大尉機は新宿の上空で一機撃破、曹長機もこれと前後して二機撃破といふ大戦果をもたらした。昨年十一月以来この基地における対B29の総合戦果は、百四十機撃墜破といふ赫々たる記録を残している。

 
大尉は突撃戦の状況を次ぎのやうに語る。
 「戦闘号令後○分、埼玉の川口市上空五、六千米で一機を捕捉するや敵は俄に機首をぐっと下げて逃げ出したが「生意気なやつめ…」と執拗に食ひ下がって必中弾を浴びせ、右翼発動機から忽ち火を吐き無ざまな格好で墜落していった。このとき東京湾上空から百米くらひの間隔を置いて侵入してきた三機をつゞいて捕捉し、これまた二機を撃破したが、敵は技術的に編隊を組めないらしく戦闘は極めて仕易かった」


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