読売新聞 昭和20年2月7日 水曜日 07.4.1
皇土護持に羽搏くぞ学鷲 若武者ぶりも颯爽、初の震天制空隊長 【某基地にて北條特派員発】


 若い魂を敵撃滅の大空にはばたかせていま南の決戦上に、また皇土のまもりに陸軍特別操縦見習士官出身の学鷲たちは活躍している。ここ某基地の学鷲の一人S少尉はその優れた操縦技倆と人格を買はれて、皇土の神鷲震天制空隊の名誉ある隊長に選ばれた。学鷲のうちから特攻隊長に選任されたのはS少尉をもって嚆矢とする。
 そして鷲にとって輝かしい栄誉である学鷲○○名もいよいよ宿敵B29の邀撃戦に参加。母校学園の空高く愛機飛燕をかって皇土を護る好機を迎へた。晴れの震天隊の
S少尉はじめ出陣の感激に沸く若武者たちからB29必殺の決意をきいた。

S少尉
 『皇土の大空に死に場所を得たのは我々学鷲にとってこんな喜ばしいことはない。特に隊長に選ばれ軍人としての名誉に感激しています。空中勤務について以来、まだ一度も生とか死とかいふものを考へたことはない。ただ任務を完遂する。いひかへれば、体当りに成功することを念願するばかりである』
Y少尉
 『体当りは完全にその人の魂が敵機に命中することゝ信じている。操縦技倆はなほ及ばなくとも、体当りは精神の問題であり闘魂の問題です。つゞく後輩たちにこの魂だけは失はないでひきついでおきたいと思ふ』
N少尉
 『我々の立つべき時が来た事をハッキリ知った。畏くも陛下の御馬前に死することができるとの光栄は死をもってしてもなほ及ばぬことです』


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