『狂界線』
終、再/いつか見たあの日の空




 そうこうしていると向こう側から少年と一緒にいた女の子が戻ってくる。だが、途中で別の女の子と話し出した。
話している少女も背が低く、まだ幼い印象を受ける。すると隣の青年が意外そうに話す。
「……あれは俺の連れだ」
「……は?」
 少年が意外そうな顔をする。どう見ても青年とは兄妹にしか見えないが。
「……そっちの趣味か?」
「違う。あいつはあれでも十六だぞ」
「はあ? あれで俺と同じかよ」
「なんだ。お前も十六か」
 少年からすればあの少女は十四かそれより下にしか見えない。
「ちなみにあんたは」
「二十。まあ大丈夫だろ」
 何が大丈夫かはまあ、置いて。随分と楽しそうに話す二人を見ているのも悪くはない。
「あの子は?」
 青年が質問する。
「むかつく奴から依頼を受けてな、その時に。あの子そのものが依頼物だと。ったく」
「そうか。まあお前が引き取っているなら問題ないだろ」
「太鼓判押すか」
「直感だ」
 いい奴だ。早めに会えば友達になれていただろう。
「なあ」
 青年が呟く。
「ん?」
「もしさ、この四人でまた会うことがあれば」
「ああ」
「どっかで適当に店でも開かないか?」
「……いいな。そうするか」
 ありえない約束も、悪くない。
「来たか」
 少年が呟くと駅に電車が入る。これでお別れになるか。
「行くのか」
「ああ」
「じゃあな」
「違うだろ。またな」
「ああ、そうだな。またな」
 あっさりとした会話を残して、バッグを肩に女の子の元へ。
「これで出るぞ」
「ええー? もっとお話したいよう」
「しょうがないでしょ。運がよければまた会えるから」
「うん……」
 少女が女の子の頭を撫でる。
「いい奴だな、あんたも」
「そうですか? あなたがいたからあの子はここまで真っ直ぐになれていると思いますけど」
「そうか。ありがとう」
「いいえ。ここでお別れですね」
「さあな」
「え?」
「ま、詳しくはあいつに聞いてくれ」
 目線を青年に向ける。すると理解したのか、少女は頷いた。
「ほら、行くぞ」
 電車に乗る。二人で少女に手を振ると、すぐに電車は動き出した。
「またね」
「うん!」
 最後にそんな会話を残し、電車は駅を離れていった。駅が見えなくなってから椅子を探して二人で座る。
「俺が窓側でもいいのか」
「うん。たまにはねー」
「大人ぶるなよ?」
「えへへ」
 無邪気に笑う女の子の頭を撫でてやる。するとこちらまで嬉しくなるような笑みを返してくれた。
「あのさ」
「ん?」
「あの二人」
「お姉ちゃんとお兄ちゃん?」
「ああ。今度もし俺たち四人が会うことがあったらさ、どこかで店でも開こうだとよ」
「お店?」
「そう」
「うん! いいね!」
 喜ぶ女の子を横目に窓から外を見る。草原はどこまでも綺麗な緑色で染まり、美しい絵を描いて見せる。そして見上げた空には。
「ふふっ。やっぱ、な」
 いつか見たような澄んだ青色。そして元気に走り回る雲。この空をどこかで見ている仲間と繋がっていると確信して。
「ね、次は何処に行くの?」
「そうだな。ここは?」
 場所を告げると女の子の顔がさらに笑顔になる。すぐに行きたくてたまらないようだ。
「ま、ゆっくり行くとしようぜ」
確かに歩き出した少年は、どこまでも広がる空を見て優しく眼を瞑った――
        


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