『狂界線』 七/壊れた歯車 カタカタカタカタ。 歯車が廻る。 カタカタカタカタ。 止まることはない。他の歯車と噛み合わさるが故に、どれか一つが動けば全てが動かざるをえない。歯車とはそういうものだ。 カタカタカタカタ。 辺り一面が闇の中に、五つの歯車が噛み合って動いている。 ――一人の少年と、一人の少女が向かい合っている 歯車は止まることはない。だが気付いているだろうか。五つ目の歯車だけ、他とは違いある一つの歯車にしか作用していないことを。 ――二人とも、動きはしない ああ、この瞬間がずっと続けばいいのに。そうすればこのままでずっと一緒にいられるのに。 ――そして。 カ、タ。カ……タ。 一つの歯車が動きを止めた。それと同時に他の歯車が全て止まる。 バキン! 歯車が一つ、音を立てて壊れる。 ――少女が、仰向けの体勢で闇の中へと落ちていった ――少年が手を伸ばして バタン! ――目の前の扉が、急に閉まる カ……タ、カタ。カタカタカタカタ。 再び歯車が廻り始めた。今度は四つで。 ――少年が膝をつく ――流された一粒の涙が落ちる ――そして何もない闇に、一つの波紋を残した。 |