『狂界線』 零/冷たい雨とあなたの手 瓦礫の中から死体を全て持ち出して、土の中に埋める。雨のおかげで随分と地面が柔らかい。作業は二人にも関わらず思いのほか楽に進んだ。 「これでいいか」 全部で七つの墓ができた。 「うん。形はそれらしいよ」 それぞれ死体の上には木で作った不器用な形の十字架が突き刺さっている。 「花の一つ、欲しかったな」 少し貧相に見える。 「また来れば、その時に。ね?」 シスター・レムにはスズランがよく似合うだろう。だが。 「次は、ないかもしれない」 さて、これからどうするか。 「ねえ」 背中を向ける前に。 ――手を、差し出された。 「一緒に来ない?」 どうしろと? 「運命、信じない?」 「そんな考えは生まれてすぐに捨てた。ヒトが背負うのは運命ではなく宿命だ」 「ならさ、ここから信じようよ。都合のいいことくらいは、ね? それくらいの権利はあると思う」 「……本気か」 「うん」 ――手を、優しく握り返した。 |