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きゅう/アナザーサイド
〜さよならの家族・お帰りの家族〜
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 地面に血溜まりを作り上げた少女の側に歩み寄る。この傷は上空から落ちた衝撃で出来た傷だ。

第六・源殺の攻撃では傷は発生しない。根源を殺して消滅させるこの兵器の攻撃は、傷などと言うレベルではすまない。


 そして少女は、上空から叩きつけられて落ちたにも関わらず、体がばらけることは無く、きれいな形を保って意識を失っている。

「その後にパリでお前に会ったんだよなあ。ああ、本当に色々あったよな」

 静かに吐息を吐いて眠る少女に話しかける。

 何も知らない純粋で無垢だった少女。

 最初から兵器として『作成』され、決められた生き方をする以外は道がなかったはずの少女。

 副作用として現在のような症状に陥るものの、それでも俺はこいつと一緒に旅をしてきた。

「前に駅で会った男と女の子、覚えているか? あいつに貰ったライター、結構使い勝手いいんだぜ」

 少女が答えずに眠っていても話を続ける。

 少女にとって世の中は、全て刺激に満ち溢れていた。

 少女にとっての世界の中心は俺であり、唯一の家族だった。

「お前と会ってなかったら、もしかしたらこんな状況になっていないかも知れなかったな。再開して、普通のヒトと同じように学校に通って」

 俺は聞こえて無くても話を続ける。

 俺にとってこいつとの出会いは、自分の存在を再認知させる貴重な出会いだった。

 俺にとって世界の中心はいつのまにかこいつになり、家族になった。

「さて」

 寝たままの血まみれの少女を優しく抱え上げる。体温を感じることが出来、少女の体は温かい。

「帰るか」

 もう一つ、我らの家族の下へと帰還する。

「な、アティ」

 夜が明けて街が騒ぎ出す。


 雪那は大きく舞い上がり、ビルの上を飛びながら我が家へと向った――


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