住職の妻帯


住職が妻帯することに対して、皆さんはどのようにお考えでしょうか?
古来より、仏教をはじめとして多くの宗教・宗派では聖職者の婚姻は戒められてきたのではないかと思います。
しかし、現在の仏教界、特に市井に存在している末寺では住職が妻帯していることが一般的ではないでしょうか。かく言う私も妻帯して家族を有しております。

各末寺では住職の奥さんが坊守(お庫裏さんとも呼びます)として諸々の日常寺務をこなしているのが大方ですし、実際問題として住職の妻無くして寺の運営がままならないのが実情です。また、世襲ということに問題がない訳ではないですが、特に末寺では住職に子供がいたほうが後継問題がスムーズにいくことが多いのも事実です。したがって、檀家さんからも住職が妻帯して子をもうけることを推奨されることこそあれ、批判されることはありません。

真宗では、宗祖親鸞聖人や蓮如聖人は妻帯しておりましたので、当宗派に限れば問題ないとも言えます。一方で、古典仏教的に考えた場合、女犯の罪に該当するのではないかという点がありますが、実は別の点で問題意識を持っております。

それは、「経済的観点」、言い換えれば「お金の問題」です。
住職が独身として寺に居住し、日常寺務を行いつつ、僧として質素な生活を送っている限り、住職自身にそれほどのお金は必要とはなりません。したがって、頂いたお布施の大方は寺院運営費に使用することができます。つまり、貴重な浄財を住職個人に対する私財(すなわち宗教法人から住職個人への給与・報酬)へ回す割合を低く抑えることができる訳です。
これに対し、家庭を有していると事情が大きく変わってきます。家族分の食費や生活費、子供の教育費等をはじめとして、世帯として発生する必要経費はかなりのものになるでしょう。これをお布施を原資として賄おうとすれば、大半の規模の末寺では総収入のかなりの部分、場合によってはそれでは足りないぐらいになってくるのではないかと思われます。
自分一人であればいくらでも融通・辛抱できますが、家族があればそうも言えません。そのような状況では、一般論として、やはり効率(コストパフォーマンス)のよい仕事・案件が好ましく思えてくるのは自然なことです。それを積極的に求めたり、選り好みしないまでも、高効率の仕事に当たった時には‘ありがたい’と思う気持ちが生じることは容易にありえましょう。

このような気持ちの生じることが危惧されたために、これまで住職専業で寺に入ることを避けてきた面もあります。今般、寺に入職することとなりましたが、依然として兼業状態でありますので、そちらの職で生計を立てていることは変わりません。
寺からは一切金銭的見返りを求めず、完全なる奉仕としての住職業が理想といえば理想形なのかも知れませんが、それはそれで家族には余計な負担となってしまいます。
そんなこんなで、住職の妻帯や兼業の是非につき思いを巡らしている昨今です。