冷やしわかめうどん
早起きをして新幹線で向かう道中も快晴の秋空で 富士山も頂きにチョッピリと雪を載せた姿で見送ってくれた。
京都の街も青空で時代祭の当日を迎えており、翌日に所用を控え祭り見物の小生にラッキーな日が始まった。
コインロッカーに手荷物を預け地下鉄で烏丸御池駅に降り立ったのは10時半頃、時代祭行列の出発は正午なので最寄り駅一つ手前で降り裏町通りで早昼飯でも…と考えてブラブラ歩きを始めた。先の一年間は今春の個展作品用の取材に 京都の街を累計34万歩のブラブラ歩きをしていたけれど
この辺りは空白地でもあった。
ふと気づくと急に上着の前が軽くなったように感じ 見ると、上着の飾り金ボタンの一つが何処かへ飛んで無くなっている・・・すぐ来た道を30m程もどるとボタンがお迎えを待っているかのように道に転がっていた、ブレザーも柄違いのボタンで補修したのでは
様にならないと胸をなでおろし気を良くした。
再び御所方面に向かい歩き始めると街中の公園の角に一人の裃姿の男性が佇んでいる、「お祭りですね!」と声を掛けると「見物ですか」との応え・・・それから
地元ならではの時代祭の起こりや運営の仕組みなど様々な話をお聞きして大変勉強になった。
祭には京都市内の学区ごとの当番があり この区は「藤原公卿参朝行列」が担当だとの事、「出演者集合場所の大宮御所脇も行列見物と違った面白さがありますよ」とアドヴァイス
も頂いた。折しも待ち合わせ相手の男性も見えたので
お二人を写真に撮らせて頂いてその場はお別れし、小生はそろそろ集合時間の近づくくだんの場所へ向かった。 |
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頂いた情報の通りに集合場所では飾り立てた馬がずらりとロープに繋がれ、衣装を付けた参加者等は既に床几に座って弁当をつかっている。カメラマンや観光客の姿もさほどのことは無く
おとなしく佇む馬たちの鼻づらをなでたり、大原女や桂、白川女と云った着飾った女性達の姿も近くからカメラに収めることが出来た。出演者達にとっても
とても記念すべきことなのだろう「写真を撮らせて頂いて、良いですか…目線を下さい!」などとのこちらからの注文にも直ちに応えて下さって…とてもラッキーだった。 |
その様な調子でブラブラ歩く小生に一人の裃、袴、一文字傘を付けた役員姿の男性が近付いてきて「行列を見なはるの?」と問う、「ハイ、その予定です」と答えると、「ほなら、これで向こうの席に自由に入れるさかい」と長い紙に印刷した<平安神宮時代祭行列次第>を懐から出して手渡して下さった、指差された
処へ行くとそこは平安神宮関係席であり椅子席はすでに一杯だけれど敷物の最前列に履き物を脱いであぐらをかき 座ることが出来た。
そこは御所の建礼門前の行列出発点からは100mほどの場所で、思わぬ好位置に陣取ることが出来たラッキーに隣りに座っていたカメラマンと「ここに座った証拠を…!」とお互いのカメラで撮り合ったほどだ。
聞けば隣りの男性は行列三番目の「徳川城使上洛列」を担当する組のスタッフで記録写真撮影が目的だとか、それからはまたその男性から京都市民を挙げての時代祭運営の仔細をお聞きする
。行列参加者は「議員さんだとか、有名人なんかじゃなくて…町会の役員とか普通の商店やお店のおっさんなどだ…とか・・・当番は25年に一回まわってくるので なかなか
一生に」二度の出場チャンスは無いようだとか、ご自身も一応は町会長だけれど…などと」いろいろなお話を伺った。
浮き立つ祭りの雰囲気からなのだろうか 地元の皆さんの大層な親切に感謝した。
正午から約2000人、牛馬77頭の行列が出発、場所が出発直後だから行列の皆さんも元気良く目前を流れて行った。隣の男性もヤッコたちの毛槍演技などもある
参加人数で最大の徳川行列が通り過ぎると後を追って席を去られた、終着の平安神宮までカメラで追って「皆と地元へバスで帰らないと・・・」ということだった。この見物席を下さった男性は「織田公上洛列」の役員さんで目前を通る役員列の中に姿を見つけて
小生が手を振ると笑顔で返礼して下さったが、町の公園角で出会った「藤原行列」の男性は残念ながら見つけることが出来無かった。
伝統工芸を駆使した本物の衣装、道具類で飾った時代絵巻の行列に目を見張りながら最後の「弓箭組」を見送ったのはやがて2時になる頃、十月にしてはとても暑い日で
大汗をかきながら見物させてもらった行列は目の前から遠のいて行った。 |
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気が付けば ラッキーの積み重ねで昼食を忘れていたのを思い出し、丸太町を西へ少し入ったとある京そば店の看板が目につき店に入る、折しも満席で少し待たされたがようやくテーブル席についた。隣の小あがり席にはヨーロッパからの若夫婦と思しきカップルが窮屈そうに畳に座り 英語メニューを間に長い時間をかけて品定めをしていたが、小生はたまたま隣のテーブル席に運ばれてきたガラスの器が目に付き
「同じものを」と云ってすぐに注文した、それは「冷やしわかめうどん」だった。外人夫婦が選んだ<そば>は「Sold out]だという店の返事に渋々<うどん>にして注文がやっと成立したらしい、しかし小生の食後になってやっと品が運ばれてきたようだった。
「冷やしわかめうどん」にはワカメの他に刻んだ油揚げ、ねぎ、大根おろしなどが入った冷たい細めのうどん、今日の暑さに耐えながらラッキーな時代絵巻行列を見物をした最後を飾る美味だった。
(2012)
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