トウモロコシ

 夏の夕方、台所からトウモロコシを茹でる匂いが流れてくる、やがて粒々を一杯にまとったクリーム色のそれは湯気を立てながら皿に載ってやって来た
熱々で触ると火傷しそうだけれど、なんとも美味しそうな粒を指先で掘り起し、あるいは隙間なくキッチリと並んだ奴にはかぶりついてザクッと食べてやる、
 冷えたビールも美味い、夏の夕景色だ!!

   そんな夕方、ふと見やった庭の上空にトンボが飛んでいるのを見つけた、ところが見ている間にその数は増して十数匹のトンボの群れが乱舞する光景となった・・・珍しいなと思いながら縁先に出ると、何と芝生の上を二匹のヒキガエルが一隅でなにかを漁っているではないか
ヒキガエルは庭で毎年必ず目にするのだけれど、こんなにも目前に無防備に姿を見せているのは珍しい

 目を凝らすと、狙いは芝の上で羽を光らせながら、うろたえ歩き回る羽アリの様である、ヒキガエルたちはそれらを追いかけ、あちらこちらへ移動しながら活発な捕食に忙しい
・・・と観ている間にまたヒキガエル一匹が別の片隅からノソノソやってきて捕食の仲間に加わったものだ
我が家の小さな庭に今年は三匹のヒキガエルがいたことも驚きだったけれど、小生がここに住んで数十年、いったい何処でどのようにしてヒキガエルは家系をつないできたのか・・・との不思議!?
近所にはオタマジャクシが育ちそうな水溜りは思い浮かばないのに…絶えることなく毎年姿を現すのは、何故?

 ヒキガエルたちが美味しそうに舌で掬い取っている羽アリの粒だが、そのうち運よく空に向かって飛び上れても上空で飛び回るトンボ軍団に食べられてしまっていたのかも知れない
だが、不思議なのは、羽アリの粒々が発生したのは蒸し暑い日の夕方で、あるとき土中の巣から表に現れて空に向って飛び上がろうとしたのだろう…それをいつもはあまり見かけないこの庭上空からトンボ(多分?アキアカネ)はどのようにして羽アリ集団を見つけることが出来、そしてどうやって軍団に伝えることが出来たのだろうか?
 小さいとはいえ我が家の庭の三方の隅から歩き出たヒキガエルたちは、どのようにして羽アリの空中旅行の一斉出発に気付くことが出来たのだろうか?

 トンボの眼鏡は大きいからか・・・ナ? この日ばかりはカメラを構える小生と無防備にも正面から向かい合ってくれたヒキガエル(ガマ)もつぶらなデカい目玉をクリクリさせていたけれど…
屹度、トンボもガマも感度の良いレーダーやセンサーを持ち合わせ、ビビットに伝わる性能の良い連絡手段でも備えているのだろうと思う
 

 それに較べて人間はスーパーの店先に並ぶトウモロコシの山からどれが美味しいか? などと見分けるセンサーも、感度も失ってしまっているようだ
とても難しいとは思うが・・・次は頬っぺたの落ちるような熱々で、美味しいトウモロコシにお目に掛りたいものだ

(2013)

想い出落書き帖のTOPへ戻る