とんこつラーメン

 この季節の博多の屋台は、テントなどでまわりを囲い風を避けている。
それでも路上だから客は足元から来る寒気除けにコートは着たままだ。

 博多(福岡) にはこうした名物の屋台は数多く、それぞれがひいきの常連客で 賑わっている。
客にも好みがあるのは当然で、めいめいが屋台の評定に一家言を持っているらしい。
市の条例でナマモノの提供が出来ないそうで、焼鳥、天ぷら、それに一時全国で はやった『もつ煮』などの火を通したものが供され、それらをつつきながらビール、 日本酒、焼酎などを 酌み交わしながら談笑する光景が深夜まで続くのである。
 独特の食べ物も一杯あるのだが、博多ではやたらと鯖が食膳に乗る、玄海灘から 上がってきた 活きの良いものが手に入るのだが、ここではナマはあきらめることにしよう。

   博多の町は親切で、人々はやさしい。全国の繁華街比べでも 『中洲』の夜景、那珂川の川面にネオンが写る風景は屈指の 美しさだと思う。
  やさしさにつつまれて、夜の街が更けるまで賑わうのは当然の で、 ご当地を去った転勤族の懐古指数は、常に全国上位を 占めるらしい。

 中洲から橋を渡ってすぐ左に博多ラーメンの店がある。
酔客が小さな店の外のベンチにまではみ出し腰掛けて順番を待っている。
さて、小さめのどんぶりにトロッとした とんこつスープ、細い麺、白ごまと紅しょうが 入りの「とんこつラーメン」、 追加に麺だけの替え玉も注文できる。
この店ならずとも博多ラーメンは名物だが、屋台を出発点に中洲経由でこの店に たどり着く頃、夜も更けて 明日への期待が湧いて来ようというもの。
 酔いが回り、腹も収まった、少し疲れた身体でも 一晩ぐっすり寝れば活力の復活だ。

 昔、少し住んだことがある博多だが、いまなお、やさしかった人々とのお付き合いは 続いている。

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