湯豆腐
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「ッて やんでェ、べらぼうめェ」と江戸っ子なら
絹漉し豆腐を塗りの箸で食べられなければ恥じであるらしい。 |
東京の下町、鶯谷の辺りに豆腐料理の専門店がある。
有名店だからどなたもご存知だろうが、豆腐が好物である筆者ですら、
あれほどに
豆腐づくしと来れば少々うんざりするほどだが…
風物詩としては 早朝から「朝顔市」 とか
「ほおずき市」 などの露天を冷やかし
買った
一鉢をぶら下げてこの店に上がり、豆腐料理を肴にチョット一杯が
オツなのだそうな。
それでも次々に出される豆腐料理には、アンかけや味噌田楽などそれぞれに
趣向を
凝らしてあるのだから、やはりそれなりに手の込んだ付加価値が
加えられている。
東京の木綿漉し豆腐なんてレンガみたいだと京都の人は云うけれど、それ程では
ないものヽ確かに京都の絹漉しときたら箸にも、棒にもかからぬ位に柔らかい。
京都東山、南禅寺辺りの 「湯とうふ」
は有名だ、ここでは木綿漉しを使うとか。
数多く
の寺の塔中の一つが、むかしから僧達の蛋白源として使っていた精進の
豆腐をそれ
らしく自坊の庭で一般に供したのが始まりではないだろうか。
疎水沿い
の「哲学の道」などを散策した後、手入れの行き届いた庭をガラス障子越し
に眺めながら暖かい鍋を囲むなど…風情があるではないか。
こんなロマンチックな付加価値が大人気になったので、嵐山の大覚寺辺りにまで
湯豆腐の看板が見られるようになったし、その他にもあるだろう。
献立は田楽や、天ぷらなど幾品か付いてはいるが、湯豆腐がメインディッシュではちと
軽すぎるとも思う。
いや、景色を借り(借景)、赤い絨毯や、小さなコタツ、体の芯にまでこたえる
底冷えや
雪が舞い散る北山しぐれ
などの空気までも付加価値にしてしまう、流石1,000年の都
では付加価値の付けかたのスケールは違っている。
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