ティラミス

 高みに登り周りを見回し、遠くを眺めやると気宇壮大に、何とも爽快な気分になる
「阿呆の登り」かも知れないけれど、まだ世界の最高峰に登頂したことは無いけれど、富士山には何回か登り、ドイツの最高峰に、パリのエッフェル塔に、ヴァチカンのサンピエトロ寺院のドームの上にも、横浜のランドマーク・タワーからも下界の景色を眺めたことがある

 いまは東京スカイ・ツリーに高さは譲ったが東京・タワーに上ったのはタワー完成後相当な月日が経ってからだった、東京住人だからいつでも行くことが出来るとタカをくくっていたせいだろう、この伝で行くとスカイ・ツリー上から関東平野をぐるりと見回すことが出来るのもマダマダ先の話かもしれない
秋から冬にかけて乾燥した空気と少々の風が吹く日を狙い、天気予報と相談しながら昇りに行くことにしよう

 思い起こしても残念なのはニュー・ヨークのワールド・トレード・センターだ、二度目に訪ね上った屋上では5月の素晴らしい青空が手が届くほどに、頭上に近づいている様な気がしたものだったのに ・・・
高さなら飛行機に乗っていればもっと高いけれど、やはり足元が頼りないし、小さなガラス窓からでは頼りなげな覗き見的な気分にしかならない

 ある会合のお誘いがメールで届いた、半世紀ほど前に共にしたサークルのOB&Gの年に一回の集まりである、皆がそれぞれの長い人生を過ごしている間に、ある仲間には連絡がつかなくなり、挙句には卒業写真 を見ても写っている顔と名前が思い出せなくなったり、遥かに過ぎ去ってしまった昔なのだなと再確認することになってしまう
それでも会合当日に集まれるのは⇒元気な証拠…と、その日の再会が楽しみになる

 今年の会場は隅田川岸の高層ビル最上階のイタリアン、数年ぶりに行く会場なので今回は窓から観る世界一高い東京スカイ・ツリーの姿を眺めるのが楽しみだ
レストランはビール会社直営だけにジョッキに注がれたビールの泡はきめ細かくて、泡にさした爪楊枝がそのまま立ち続けるほどだ、もちろん冷えたグラスの生ビールの味わいはひと際 美味くなる
 

 仲間との積もる話でワイワイと賑やかな会場テーブルの料理が何々であったか記憶も定かではない中で、デザートのティラミスだけが初回の折以来強く印象的だ
極めて柔らかいケーキ台の上にタップリと粉チョコレート載せ、とても美味しいからとあわてて口に入れ、息を吸いこもうものなら、粉チョコレートを喉まで吸い込んで咳き込んでしまうかも知れない
おそらく今回もまたお目に掛るだろうそのデザートを存分に楽しむまで、昔に還り、それぞれの近頃の自慢話や愚痴を聞き、眼下の隅田川やその先の浅草寺、上野の山など の街の景色を眺め、背後の窓から身の丈634mの新名所、東京スカイ・ツリーを見上げて記憶に留めて置くことにしよう

(2013)
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