竹は植物の中で成長が一番速いのだそうだ。
幹が中空だからそうなのかも知れないが、節はキッチリと固めて真直ぐに天空に 向かう様は、日本では目出度い植物の代表として松と梅の間にはさまれている。

 頃合の良いことを旬(しゅん)と言うけれど、これにタケカンムリを載せると 筍(たけのこ)となる。
いまの季節は筍の旬にあたる、京都の洛西 長岡京市の辺りの筍についてふれたい。

   この辺りは遠目にも一面の竹林の大きさが判るけれども、古くからの竹の産地として有名で、ある料理屋など自前で1万坪ほどの竹林を持ち、そこから取れる旬の筍料理を今ごろは供しているはずだ。
 たかが筍の料理と言っても決して安い料理ではない。けれどもある年の春に「筍づくし」を食べに出掛けた。

 筍の刺身、筍の木の芽和え、筍の味噌田楽、若布入り筍の澄まし汁や筍御飯に 至るまで 文字通り筍づくしではあったが、筍の強いアクを少しも感じさせない見事な 料理ではあった。
  筍の生まれ故郷の竹林は落ち葉などで床を厚さ数メートルになる位ふかふかに 造ってあるので、筍は柔らかく育ち 頭が地面に出るか出ないうちの朝方掘り起こ されるようだ。

 明るい春の陽射しが射し、勢い良く天空を目指す竹も土の中には網の目のように 広く根を張っている。耐震建築などと言わなかった昔から 地震が来たら「竹林に 逃げ込め」と教えられていた、地割れの防御にも役立ってくれるのである。

 わが家近くに辛くも残っていた竹林が切り倒されてマンションになったのは数年前 のこと、 小生の子供の頃には竹林主のおかみさんがリヤカーに乗せて届けてくれた 旬の朝採り筍にはもうお目に掛る事は出来なくなってしまった。

 名代の「目黒の筍」 最後の竹林だったのだが・・・

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