にぎり寿司

 わが家近くの話で恐縮。
住宅地ですら最寄駅近くには数軒の鮨屋さんを数えると言うからこの業種も相当に 激戦であるらしい。もちろん高級で名の有る店について ここで触れるほどの知識も 経験も筆者にはないから、身の回りの話についてである。

 

 先日、近くでふと見つけてビックリ、何時も馴染みの寿司店から正確に25歩の近さに、新しい寿司処が引越して来ると言う。
ちょうど内装工事中で入口から中を覗くと、工事の職人が「檜の無垢のカウンターだ、これだけで車1台買えるよ」と言う。
 それは綺麗で立派だが、こんな出前中心の住宅地なのだから、ちょっと気の利いた肴でも出して呉れる洒落た店ならば良いがな・・・などと思ったりした。
でも店の造作から推察するときっとExpensiveではないかと思う。

 ところが先住者の寿司店、急に「20年経ったから、改築し…開店」とビラを張って店を 一時閉じてしまった。これではやがて綺麗な店が並んでも、 顧客としては手放しで喜ん でも良いものやら・・・・・

 魚市場では「寿司ねた」は特別に吟味されたもので、そこいらの日本料理店の刺身 などとは物の程度が違って、チビチビとやる酒の肴では最高級だと思う。
それでも寿司店同士が競い合っているから、いろいろと趣向を凝らして 店の特色を 出すのが腕と言うもの。

 まだ物の不足していた昔、東急 玉電の三軒茶屋にあった名物鮨屋さん まるで お握りのような大きなシャリには、チョンとネタが載っていて、土産の折箱などズシリと 重たかったことを子供心に覚えている。

 大阪あべの橋から出る近鉄線は2つ目の駅が北田辺だったと思う。
ここにあった江戸前のすし屋ではニギリを皿に2〜3コのせて出す(大阪ではそれが 普通)。
とにかくこの店のネタはバカでかい、大きく切れるものは何でも・・・マグロでもイカでも 皿からはみ出していて、もうその一皿だけで満足の気持ちだ。それこそ腹にズシンと 来るので、 何か手ごろな物はと…考えて「赤貝」を注文した、これならば大き過ぎる はずはない。 ちなみに、シャリは申し訳程度にチョッピリで、ネタに隠れて潜んでいた。

 恐らくどこの街にも自慢の名物寿司店があるだろう。
きっと皆様も取って置きの行き付けをお持ちであると思う。
しかし、予め情報を持ち合わせないと暖簾をくぐりづらいのがこの業種、顔馴染の板さん とのカウンター越しの会話も大切な要素だ。

  思い切って新しい店の格子戸を開けて見ようか。

 

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