いちご
 
 家族が「今日はケーキでも買ってきましょうか! お父さんは何が良い?」…と聞かれると、決まって「イチゴのショートケーキが良いな、一番ケーキらしい」と答える場面が多くあって、以来黙っていても、家族そろってケーキ箱の中から目の前の皿に取り分けられるのは「イチゴのショートケーキ」であることが多い…言い訳をするとその他のケーキが嫌いなわけではないけれど、スポンジと生クリームそして新鮮なイチゴの組み合わせが、どうも育ちざかり期の食糧難時代にケーキ⇒イチゴのショートケーキと頭に刷り込んでしまったのだと思う  

 育ち盛りだったその頃のイチゴの旬、初夏を迎えると食卓にやって来るのは赤く、三角形で薫り高い可愛らしいイチゴが底の浅い小型の木箱に並んで居て、静岡県 久能山辺りの石垣イチゴ…それは大海に面した温暖な地域の石垣のぬくもりが育てた貴重なものだったが・・・ミルクをかけてスプーンで丁寧に潰して大事に口に入れた ものだが、最近ではイチゴの最盛期はクリスマス、正月の冬期だということ、季節が大いに変わって一年中口に出来れば旬は無くなったも同然だろう

 イチゴに限らずブドウ、ミカン、なし、桃などありとあらゆる果実や蔬菜類に季節、旬不明が拡がっている
もっとも北半球に住む我々には季節が反対である南半球からも短時間で届けられる輸送手段が発達したので、一概に国内の栽培技術の発達だけとも云えないが・・・
それでも天日活用だけの温室では育たないから石油を燃やして温度を上げて育てる、その農業技術の発達と日常の栽培農家のご努力には感謝しつヽ、 オーストラリアやアフリカから運んでくるなら航空燃料も必要だから、まるで石油を食べているのでは…と云う何かしら後ろめたさも全くない訳ではない

 かくして品種改良でイチゴの味も甘みが増してぐんぐん美味くなり、北に南へと産地も広がって産地間競争すら激烈である
その意味では消費者として、季節を問わず美味しく新鮮な果実を口にできる幸せを享受しているのだから・・・文句を言う筋合いではないのだけれど…

 大雪の朝、多くのハウスが降雪の重圧に耐えかねて潰れ、設備の損害を莫大なものにした、復旧にはさらに多くの新しい投資が必要だと嘆く生産者の溜め息声を聞くにつけ、人間のあくなき欲求と 進歩への努力を知る
片や地の底を探っては石油やガスを汲み上げ、燃焼させて二酸化炭素を大気中に放出し、はては地球温暖化にどう対処するのかと議論を重ねる 、いじくり回される地底にだって言い分もあるだろう、身震いなどして地震などを起こさないで欲しいものだ
 人間も自然を構成する一部なのだが…科学技術進歩とか些か自然に対する謙虚さを欠いては地球は何を感じて居るのだろうか? ・・・それは造化の神のみぞ知ることなのだろう

 旬の味こそが本物だ等と、片や科学が進めた魅力に堪能する凡夫の反省などは戯言に等しいか

(2014)

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