ソーセージ

  このところの旅行は国内、海外を問わず毎回ネットで組立てるが、注意深くリーズナブルなサイトを選択して利用するようにしている。数年前のことだが旅行の半年近く前に予約し て宿賃も払い込んでおいたのに、いざ旅行出発の一週間前になって「ホテルがダブルブッキングしていた」から・・・との理由で「代案はこちらを紹介できる…」とシャーシャーとメールしてきたようなホテル案内サイトがあったけれ ど・・・もうそれ以後は絶対にそのサイトは使わない、すぐPCのお気に入りからも削除してしまった。

  予約する全部のホテルは朝食付き、つまりB&Bと言う訳だけれど朝食会場がどんな具合なのかはちょっとした楽しみでもある。最近ではどのホテルでもビュッフェ・スタイル で食品種類も大きくは変わらない、卵はほとんどがスクランブルだが時折ゆで卵を供するホテルもある、温かい肉類はベーコンかソーセージ、紅茶かコーヒーの選択でもイタリアでは コーヒーにカプチーノかエスプレッソを選ぶくらい…したがっていつもの我が家の朝食がそのまま旅先でも続けられる。

  けれど、いつものスタイルを変えてみようとすればメニューはやはりヨーロッパ風、スライスのチーズ、ソーセージ類が多いから、これをブレートフェン(小さいパンという意味)のパリッと固い外の皮 にナイフを入れて上下ふたつにスライスし、中の柔らかい白パンにたっぷりバターを塗って、くだんのチーズやサラミ・ソーセージやレバー・ソーセージなどを挟んでかぶりつく、あるいはオープン・サンド風に口に運んでもよい、美味しいけれど パンの噛み応えは相当ある。そのほかメニューはフレーク、ジュース、ミルク、ヨーグルト、デザートのフルーツ、スイーツなどで朝食の組み合わせはいくらでもできる。

  ソーセージの種類も多い、朝食ではないが名物ソーセージもいろいろあって 大きいの、細くて長いの、太くてナイフを入れるとプチューと肉汁が飛び出してきたもの…などなど様々、例えばミュンヘンはビールの本場…もちろん大きなビヤホールにも数軒入ってそれぞれを楽しませてもらったが、名物の白ソーセージにはついにお目に掛れず仕舞いになってしまった。というのも 、傷み易いとのことで昔から午前中に食べるべきものだそうだ、今でもこの伝統を生かしている店が多いとか、日中の行動を考えると白ソーセージは食べたしビールが入ると…? 断念してしまった。

 ドナウ川畔の美しい町として知られるレーゲンスブルグに行く、ドイツ最古といわれるソーセージ屋で炭焼きソーセージを食べた。
ミュンヘンからローカル列車で片道約1時間半、東ドイツの中世の面影を残す旧市街、大聖堂などの教会も数多くドナウ川には石造りの反り橋が架かりその光景が美しい…その 橋の名もただ「石橋」。
 

  橋の下手の小さな小屋の中を覗くと炭火でソーセージを焼いているのが見え、川岸の白いパラソル下にはテーブルとベンチ、テーブルに客はギッシリでソーセージを頬張り、ビールのグラスを傾けている。はずれのベンチが空いている、「いいですか?」と隣席の中年カップルに聞く…ニッコリとうなずく、座った我々に「シックス」と注文の仕方を教えてくれる、係がテーブルにやってきたので隣のカップルの皿を指さして「シックスを二皿 」と言いビールも注文する・・・

  川への傾斜面に据えられたテーブルとベンチは傾いて野趣豊か。
隣席の中年カップルは自転車と鉄道であちらこちらを旅するのが楽しみだという、ヨーロッパの鉄道のほとんどに自転車を積むスペースがある、二人はドイツの最南部ボーデン湖のコンスタンツから来たと言う、我々も2年前に ご当地を旅をしたなど話が弾んだ。

    小ぶりな炭焼きソーセージを6本とキャベツの酢漬けが皿に載ってまことに単純明快、香ばしい熱々のソーセージは旨い、小生のビールはピルス 隣の男性は茶色のドゥンケルスが旨いと 言いながらグラスを傾ける、愉快な会話が続いたのでちょうど持ち合わせた小生作の絵ハガキを進呈した、夕焼け空を背景の平等院絵はがきはご当地では珍しかろう 、大いに喜んでくれた。

  最後にはメール・アドレスまで交換して別れたのだが…そう、白パラソルの下、ソーセージが縁で触れ合ったお二人にはこの川岸の風景が絵になったら写真をメールで送って差し上げよう。

(2010)

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