いかの塩辛
 いか(烏賊)は種類も多いし季節によって供される種類も違ってくる。
富山湾では子孫を残す為に深海から涌き出る「ほたるいか」などロマンティックな代表格である。
烏賊は世界中の食卓に上がるし、わが国の市場に出まわる烏賊だって、どれ位が大西洋からやってきたものか判ったものではない。

 それは兎も角、あの干した「するめいか」、今や目の玉が飛び出るほどに値の張る ものだが、その昔は最も安い子供のオヤツや、大人の酒の肴だったものだ。
火にあぶり、そして裂いたやつをチューインガムの様に噛みながら育った昔の子は、 だから歯列アーチが大きくなり歯も丈夫だったという話しだってある。

 するめいかのふるさと函館の街に行き、皿に山盛りに盛った「いかソーメン」をショウガ 醤油でソーメンの様にすすったあの歯ごたえは忘れられない。
その後、東京で同名の品を酒の肴にと注文してもいつも失望するだけだ。
それでも「いか」の刺身はうまい。

 塩辛が面白い。子供の頃父が酒の肴につまんでいたあのピンクの生臭いもの、 良くもあんなものを・・・と思っていたが、自分が酒飲みの年齢に達するようになった ある時、ゆず風味の自家製をご馳走になってその虜になってしまった。
最近の行き付けの店では、ピリッと辛いくらいに唐辛子を混ぜ込んだもので、みやげに ちょくちょく持ち返り家族の間でも大人気である。

 福岡のある大きなフグ料理店では、その他の海産物も豊富に扱っていてその中に いかの塩辛もある。しかしここの塩辛は変わっていて、いかのワタは全然使わずに みりん等の味付けだけの様で、もちろん見た目には白く「いか」そのものである。
塩辛はご飯に載せ、熱い茶をかける塩辛茶浸けも旨いが、福岡のそれは極めて 上味である。

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