シチュー、ハヤシ、カレーライス

 高校まではサイクリング以外のスポーツはしたことがなかったけれど、大学に進んだら なにか体育会のクラブに入って頑張ってみようと考えた。
 花咲く春の入学式のあと、バスケットボール部とボート部(わが母校では端艇部と言う)から 揃ってお誘いがあった。見かけから「あいつデカイから」というわけだったろう。
不得手の球技は避けることを心に決めていたから 「マ、遊びに来てみろよ」と言う先輩の 甘言につられて戸田ボート場へ出かけた。

 当時母校にはオリンピック出場クルーの一部も残っていたし、彼らの隅田川でのレース振りなどはTVで見ていたが、いざ初めて乗る舟は遠くから見ているのとは大違い、これから先の練習の厳しさが早くも思いやられた。  

 その頃、英国のオックスフォード大のクルーが来日し、国内大学との競漕に備えてわが校の 艇庫に特注の船を置いた。我々も日本人として決して小型ではなかったが何しろ彼らはデカイ。
その舟は我々のそれと較べて2m近くも長い。
練習にしても都内のホテルからバスに乗って楽しそうにドヤドヤとやって来て、艇庫から軽々と 岸まで舟を運び、運動シューズのまま舟に乗る(当時の我々は岸ではだしになってから丁寧に 舟に乗った)。そしてゆったりとしたピッチの漕法で力走し、しかも速い。 クラブハウスにはティーセットまで持ちこんで、彼らは一体何を食って育ったんだ・・・と思った。
  科学のスポーツと言われるボートの彼我の実力差は大きくここでのレース結果はもとより、残念 ながら毎回のオリンピックのTV中継ではいつも国際映像画面からはみ出してしまう。
そう、参加することに意義あり。

 さて、昔からボートはまず「飯炊き」から、と言われて新人のまず初めの役割です。
それまでは親任せ、人任せの食事をして来たのに、新人二人のペアでいきなり大人数の食事を 作るのですから、メニューは以下の例の如しでした。

第一日目、肉、ジャガイモ、ニンジン、タマネギなどを刻んで鍋にいれ塩味少々、牛乳を入れコショウ  で調味、シチューの出来上り。
第二日目、肉を牛肉にして材料おなじ、ハヤシ・ルーを入れたらハヤシライスです。
第三日、適当な肉にしてカレー・ルーを入れるとカレーライスだ。
第四日、今日は、敵に勝つ様に「ビフテキ」と「とんかつ」、牛肉は焼くだけだから簡単。
第五日、チャーハンを作りました、「旨かった」そうです。買い過ぎたチャーシューが猛烈入っていたの  ですから、当たり前でしょう。
次の日には、久し振りの外食で味覚を楽しみました。

 それでも同じ舟に乗れば勝利に向かって力を合わせます、食後の食器洗いは皆自分の分は 自分で洗いました。時にはジャンケンで食器洗い当番を賭けましたが・・・
     先輩も後輩もそれは当然であると思える体育会でした。

 

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