さくらもち
 
 暖かい春が来た、庭に出した椅子に飼い猫のルイを乗せると嬉しそうに寝転んで化粧している。庭の桜は昨年の剪定の加減で花付が少ない。この季節になると ルイは庭につれて行き桜の葉を食べさせろとポンと肩に乗ってくる。
 季節が判るのだろうか、それにしても芽が出て程無い若葉を 口にするのは一、二枚で満足、葉が硬くなり味の変る頃まで毎日せがむ・・・縁側に腰掛けている小生の肩にポンと飛び乗ってくる。
 しだれ桜の枝先の葉を鼻先にまで持ってゆくと、手を伸ばし そして鼻に縦皺を寄せて葉に食らいつく。

  長命寺、道明寺・・・これは人間の食べる「桜もち」、前者は小麦粉などから作る皮に餡をくるみ、後者はもち米を砕いた、道明寺粉などで出来た皮に餡をくるみ 塩 漬けの桜葉を巻いた和菓子。
ほんのり桜色に染められた皮もある、前者は関東、後者は関西でおもに・・・とは言われても今では並べて店先に並んでいたりする。
 年中ある とは言っても桜の花が咲く頃になると なんとなく口にしたくなる。桜の葉は食べてもよし、
剥いて もちだけを食べてもよし、葉を食べると塩味がきつくなるが、いずれにせよ桜葉からの移り香を楽しむことに変りは無い。
 ルイはアンパンのパンは好物だけれどアンコは苦手のよう、旬を楽しんでいるのは本当は猫の方なのかも知れない。

   庭で暖かさにウットリとしばらく寝そべっていたルイが 家の中に帰りたいと鳴いている、縁側まで5メートルもないのに 渡し船のように肩に載らないといけないと思いこんでいるようだ。

 家の中が最高の楽天地だというのがルイの常識らしい。ドレドレ、春の日が強くなって背中の毛が 「アツイ、熱いね」、「さあ、肩へお乗り」・・・

                                                      (2007)

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