サケ弁当、のり弁当

 秋の一日、久し振りに富士山を訪ねることにした。
とは言っても車で5合目まで行くだけだが、頂上までは何度か登山しているから 弁解がましいが今度は許していただこう。

 登山道に入る前に富士吉田の町のコンビニエンスで弁当を仕入れて行 った。
その店は全国チェーンなので並んだ弁当の種類も東京と同じだろうと筆者は 「サケ弁当」を、連れは「のり弁当」を選んだ、ついでにお茶の缶も求めた。

 さて用意も整った、いよいよ5合目に向かおう。といつもより遥かにゆっくりの ペースで 車を転がしていった。ちょっと薄曇の空模様であったが心配はしていな かった。

 気がつくと外気温は1合目、2合目と上がるごとに1度Cは下がって行く、3合目 は 14度C、4合目13度C,ついに終点の5合目で温度計は12度Cを指していた。
そのうえ車の周りは50メートル先も見えない雲の中であった。
まあ、ここまで来たんだからと気を取り直しひと休みした後、そのまま車を300 メートル ほど戻った所のパーキングに停めた。

 その辺り周囲の木々は少し色付いて秋の紅葉のはしりであった。そのとき、かすかに雲の切れ間に山頂が赤茶けた姿を見せた。
 と同時に、下界方向の雲も流れ去り甲府盆地を覆う雲海の向こうにはくっきりと南アルプスが姿を現したではないか、わずか10分間ほどの間に起こったこの変化を、そしてこの幸運を喜んだ。
 

 さて、パーキングに巡らした大きな縁石をテーブルに見たてての昼食が旨 かった事は 言うまでもない。 サケの切り身をのせたサケ弁当にも鶏のカラ揚げ が沢山入っていた。
  ご飯を覆ってべったりと海苔をのせたのり弁当のおかずもカラ揚げだったが、 何故か 両方とも付け合せが焼き蕎麦だったのは面白かった。
結構 満足の行くものだったのは目の前に開けた幸運の景色のせいだけでは ないだろう。

 その後2時間ほどスケッチをするあいだ富士山は機嫌よく姿を見せてくれたが、 下界は相変わらず雲海の下だったようだ。

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