ラッキョウ

  福井県の敦賀から海岸道路を北に向かうと越前岬の険しい断崖風景を 楽しむことが出来る。
まだ北風の残る春先には強い風に吹き寄せられる「波の華」は、まるで洗濯機 から溢れ出た洗剤の泡のように、波打ち際から道路にまで風に運ばれて飛ん でくる。寄せては還す海水が岩と波に揉まれながら作った自然である。
  また、北西面の急傾斜地は「水仙の花」の名所でまだ寒いのに可憐な黄色い 花が風に震えながら沢山咲いている。
これも日本海を流れる対馬暖流が運んできた自然だ。

 食べものなら何と言っても「越前がに」が有名で、淡白な味は素晴らしくカニの 王様だが、ちょっと高価すぎる。
断崖が海に迫った崖下の長い道のりを走り抜けると有名な東尋坊で、まるで 鉛筆を束ねたような柱状節理の岩壁で出来た景勝地だ。

  さらに海沿いに進むと打って変わったように一面寂しげな砂丘地帯に飛び込む。
そこは見渡す限りの「ラッキョウ」畑で砂防の柵の間にはちょうど植え付けが済んだ ばかりらしく、まるで畑の畝にリボンが行儀よく並んだような光景で、よくもこんなに 沢山のラッキョウがと思うほどである。

 考えてみれば、この作物は瓶に詰まった酢付け以外には、飲み屋の付き出しに たまに並ぶエシャロットしか思い浮かばない。
けれども高級レストランの上等なカレーライスを食べても、家での夕食のカレー ライスにしてもラッキョウの漬物の幾粒かが味を良く引き立たせてくれる、その ラッキョウばかりを植付けた見渡す限りの砂丘の畑の風景は見事なものである。

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