柿の木はさくい、竹竿の先に裂け目を入れ 開くように隙間を作った道具を使い柿の実 をもぎとる。
 熟した実のある小枝を竹竿の裂け目にはさみ竹竿をクルりと回すと枝はポッキリ折れて簡単に 実をとることが出来る。
サルかに合戦はサルだから柿の木を登れた訳で、油断をすればサルも 木から落ちる、ましてや重たい人間さんには到底お勧めできない。実をもぎに柿の木に登り美味しそうに熟した枝の先の実に手を伸ばした途端に足許の枝がポキリと折れ、柿の実と 共に自分が地面に落ちる結果になるかも知れない。クワバラ、くわばら。

 果物の皮むきの練習には柿は良い練習材料になると思う、小さい実ても、大きな実でも包丁を使ってむく皮が長いリボンのように様になるまでの練習にはいくらも時間はかからない。
爽やかな実りの 秋になると庭の柿の実をこうして採り、そして縁側に座りこうして皮をむいて食べたもの である。
 柿はとてもビタミンが豊富だそうで、その上殺菌力もあるという、柿は葉でさえ保存の役割を担って柿の葉寿司では美味しい鮨を包んでいる程だ。

 季節になると鳥達は良く知っていて一つ二つとついばんでゆく、庭 先の柿の実くらいなら 鳥達に進呈するのはご愛嬌だが、商売用ともなればそうは行かない。岐阜県の有名な柿の 産地でこの対策が大変であることを知った。何しろムクドリの大群ときたらまるで遠目には蚊柱 のようで、上になり下になり まるで空に渦を巻くように大群が舞い踊りながら飛んでくる。
 鳥のくちばしの一寸した一突は黒い傷となり商売用となれば売り物にならなくなって しまう。 だが庭の柿の実の幾つかは冬がきて寒くなるまで鳥達の楽しみに残しておいたものだ。

 ムクドリだが、先年までは我が家近くの竹薮は絶好のねぐらであったらしく、夕方の帰巣時 は 一団が休む前の語らいをするかのように電線にビッシリととまり声を上げ、その賑やかさと言 った ら無かった。それでも電線に止まったムクドリを見ていると、両隣の仲間との間隔は一定以上 開けられているようで、何やらの語らいもまるで喧嘩をしているようにも見えるから、結構鳥達の 間ではいさかいの種も多かったのかも知れない。

 柿を写生するのは楽しい、川崎市の柿生の里でのこと、たわわに実った柿 の木が目に付いて 折り良く居合わせた農家のおばさんに畑でのスケッチの許可を貰った時のことだ、暫らくして 画用紙一杯に柿を写し取った頃になって、「見せてくれる?」とおばさんがやってきて雑談・・・
そして目の前の柿一枝をお土産にとくれた。帰宅したあと頂いたその枝も絵になったものだ。
 柿の実の色や反射する光を描くのは絵の 練習にもってこいだと思う。その頃の柿の葉は濃い 緑の葉も残るが、黄色の葉、まだらに赤く色付いたもの、少し虫穴もある疲れたような葉などで 秋のテーマを充分に表せる絵が描ける。

 干し柿も旨い、渋柿がどうしてこんなに甘くなるのだろうか、正月のおせちに は欠かせない 「なます」には干し柿で甘みをつける、柿は酔いをも醒ますそうだ。
柿渋もいろいろと役立つと言う、本当に柿にはお世話になっているのである。

 今では我が家には柿の木がなくなってしまった、また近くの竹薮もマンションに替って しまい ムクドリの大群も近くには来なくなってしまった、街には次第に緑が少なくなっている。
  今年も郷から沢山送ってくれた柿の実は昔より随分小さくなってしまったとカミさんは言う。

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