おにぎり

 春恒例の個展<季節の水彩画>が会期を過ごし 恙無く閉幕したのは10日程前のことだ。
師に勧められ芝三田の小さなギャラリーで初めたのは12年前、その後 個展会場は銀座4丁目から銀座1丁目、そして今年は京橋と移って来た。それはそれぞれの会場に事情があっ て画廊の閉廊と共に新たな会場を求めて 、地図の上ではなぜか東へ移動して来たみたいだ。

 旅のスケッチ、動物、植物など描きたいものを、描きたい様に水彩で描くのが小生の作品。
仕上げた作品には展示の機会を作りたい・・・と思うのは素人画家の夢だが、小生には夢を後押してくれる多くの方々との触れ合いがあった、本当に幸せで有難いことである。
個展の回を重ねても「作品は前回よりも良く変わっているね」とは言われたい・・・それが小生の作品つくりのバネになって一枚一枚に想いを込めて丁寧に描きあげたものだ。

 個展での作品の構成は毎回一年がかりの企画になる、年々の取材旅行でため込んだスケッチをとり混ぜて絵にすることも出来るが、13回目を迎えた今回は前年の個展以降 一年の取材旅行の間にスケッチした作品にしぼった。
 振り返ればこの一年間には愉快なことも、新しい出会いもあったけれど、共に旅した絵の仲間との突然の悲しい別れにも遭わねばならなかった 、秋の九州旅行が最後になってしまった。

 長い様でもアッという間に過ぎ去っってしまった、これまでの個展の12年間を振り返っている。
毎年欠かさず個展を楽しんで下さった方、今年初めて個展を観て頂いた方など多くの方々からのお話や、作品を観賞して下さるその後姿から感じる叱咤など、全ては小生の制作の肥やしにさせて貰っている。

 個展開催でのカミさんは最重要スタッフである、一度、孫の誕生のため手伝いに行かねばならず 、会期途中から会場に不在となったときには往生したものだ、カミさん、仏さん・・・ありがたい。
 会期中は朝、デパ地下で昼の弁当を仕込んでから会場入りをするが、いつもとは別のデパートの地下は10時半始まりなのを知ってからは10時開店の角の いつもの店の弁当売り場だ。
今回は京橋へ会場が移ったけれど、ヤッパリ最寄店は銀座のそのデパートなので地下鉄を途中下車して買ってゆくことにした。

   デパ地下には弁当屋さんが沢山並んでいる、早い時間だが客筋は これから歌舞伎見物へ行く様子のご婦人方が多いようで、幕の内弁当やはこ寿司、贅沢なおかず付の高級品などが多い。
そんな人ごみを縫ってカミさんと 「今日は何にする?」と物色しては日替わりで買って行くのだが・・・
  個展会場ではつぎつぎに来展されるお客様の途切れを見つけるのは難しく、午後遅く になってから・・・ということや、今回では二人とも昼欠食の一日もあった、だから「おにぎり」や「サッと口に運べる」様な簡単なものが多くなる。

 わざわざ足を運んで我が作品を観に来て楽しんで頂けるのはとても嬉しく、感謝の気持ちで一杯。
会場で絵についての談義をしたり、積もる話などを交わしていると時間はアッと言う間に経ち一日が終わってしまう、本当に幸せなことだと思う、個展の一週間はかくも有難く贅沢な時間である。

 かくて、第13回<季節の水彩画>展は盛況の内に無事閉幕することができたのです。

(2009)

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